高校サッカー「もうひとつの聖地」
記念すべき100回目を迎える、全国高校サッカー選手権大会。今大会は、8大会ぶりに、開幕戦/準決勝・決勝が、高校サッカーの聖地、国立競技場での開催となります。
まもなく熱戦の火ぶたが切られますが、みなさんは、高校サッカーには、もうひとつの聖地があることをご存じでしょうか?その聖地とは、富士山の麓にある「時之栖(ときのすみか)スポーツセンター(静岡県御殿場市)」です。
1995年に設立され、今年で27年目を迎え、グラウンドは天然芝と人工芝を合わせて実に17面です。各カテゴリーの大会、イベント、強化合宿に使用され、Jリーグのキャンプや、2002年日韓W杯ではウルグアイ代表のキャンプ地にもなりました。高校サッカーとしても年間1000試合以上が行われ、この地を多くの代表校が選手権前の大事な最終調整の場として使用しています。
このように、この時之栖は年間約50万人が訪れる、まさに「サッカーの聖地」なのです。
もしかするとこの記事を読んでいる人の中にも、「プレーしたことがある!」という人もいるのではないでしょうか?
高校サッカー取材歴23年の私も、冬の冷たい風が吹きつける中、高校生たちの、指導者たちの、熱い思いを毎年取材してきました。
時之栖スポーツセンターは、立ち上げから携わり長きにわたり、この施設を支えてきた阿山恭弘さん(時之栖常務取締役)の存在なくしては語れません。
阿山さんは、「日本サッカーが世界で認められるように」という、ただただその純粋な心で、27年間、寝る間も惜しんで若い選手を育てる環境づくりに力を注いできました。
立ち上げ当初から現場で作業をし、最後はグラウンド設計にも関わった阿山さんですが、当初は施設の知名度もなく、誘致も困難を極め、厳しい現実を突きつけられたといいます。阿山さんは、「何度もやめようと思ったけど、やはり高校生たちの、指導者たちの熱い思いに応えたい、その一心でした」と、目を細めて振り返ります。
その後、努力の甲斐もあって、徐々に認知され始めると、鹿児島実業高校の遠藤保仁選手、星稜高校の本田圭佑選手、青森山田高校の柴崎岳選手などといった将来の日本代表の中心選手たちも、この地で研鑽(けんさん)を積み、選手権で戦い、世界へと羽ばたいていきました。
「今後は、選手のみならず、若い指導者のレベルアップを支えていきたい」と話す阿山さん。100回大会を迎える選手権についても、「この時之栖で力を付けた選手たちが、選手権の舞台で輝き、活躍する姿を見るのが何よりも楽しみ」と期待を寄せます。
高校サッカーの「もうひとつの聖地」が、これまでも、そして100回大会以降も、高校サッカー界を、日本サッカー界を支えていきます。
取材執筆:ラルフ鈴木(日本テレビアナウンサー)
※写真左が阿山恭弘さん(時之栖常務取締役)、右がラルフ鈴木アナ