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三重県出身の最強スプリンター・上山紘輝選手に密着!“急成長”の秘密に迫る

2024年5月24日 12:21
三重県出身の最強スプリンター・上山紘輝選手に密着!“急成長”の秘密に迫る

パリ五輪でのメダル獲得が期待される、三重県出身のスプリンター・上山紘輝選手。急成長の秘密を探るべく、中京テレビ「キャッチ!」は上山選手の練習に密着しました。

憧れのパリ五輪へ!「三重のレジェンドを超えたい」

「(パリ五輪に向けた)シーズンインなんで楽しく気持ちよく走れたらオッケーです」

そう語るのは、三重県松阪市出身のスプリンター上山紘輝選手、25歳。先月14日、地元・三重県で今シーズン初戦となるレースに挑みました。コーナーを開けると一気に加速する走りをみせ、見事2位以下を大きく突き放し1着でゴール。大会後、「もう少しタイムがいきたかったでも初戦にしてはいいかなと思いました。(パリ五輪は)勝ち取る気でいるので」と五輪への思いを話しました。

オリンピック出場を目指し、急成長を続ける上山選手。去年9月のアジア競技大会200mで金メダルに輝くと、今月4月には世界リレーにおける4×100mリレーの第3走者として、パリオリンピックの出場権獲得に貢献しました。

地元での表彰式に出席すれば、会場の人々からサインや写真撮影などを求めらる人気ぶり。周囲の反応に対して、上山選手は「上には上がたくさんいる」と話し、続けて「オリンピック金メダリストの野口みずきさんは(宇治山田商業)高校の先輩にあたる。今日司会をしていた土性沙羅さんもリオ五輪で金メダルを取られている。松阪市のすごい方たちに負けないようにがんばりたい」と地元出身のオリンピアたちに憧れを示しました。

多彩なスプリント・ドリルで“走りの確認”

中京テレビ「キャッチ!」は、上山選手の強さの秘密を探るべく、練習に密着。中京テレビ・赤木由布子アナウンサーがやってきたのは、兵庫県伊丹市にある住友電工の専用グラウンド。住友電工の陸上部には、泉谷駿介さんや多田修平さんなど陸上界のスターが多数所属しています。

「おはようございます」とグラウンドにやってきた上山選手。人気ファーストフード店で買ってきた朝ご飯を食べながら、「ファーストフードを食べているけど、飲み物は野菜ジュースにしています。これも撮ってください(笑)」と取材スタッフとトーク。この自然体こそ、上山選手の魅力のひとつです。

この日は、個人練習の日ということで、陸上の7種競技経験者の赤木アナがアップのパートナーとして参加。一緒にグラウンドをランニングしたあと、「隣で走っていると、本当に脚が長くて、一歩が全然違う」と上山選手の歩幅に驚きをみせた赤木アナ。続けて、「バネがありました。ポンポンポンと弾んでいく感じ」と、アップを通じて体感した上山選手の走りについて話しました。

続いてのメニューは、短距離選手には欠かせない「スプリント・ドリル」。なかでも赤木アナが一番驚いたのが、上山選手の足首の柔らかさが際立つ動きが特徴的なドリル。上山選手によると、走っているなかで“つま先動作”よるブレーキを防ぐためのドリルで、骨盤の根元から足を動かし、くるぶしで足をおろすイメージで進むことがポイントなのだそう。走るときに大事な動作で、一歩踏み込んだときに体重が乗り込める動きへとつながっています。

上山選手にとって、「スプリント・ドリル」は“速く走るためのコツをつかむための練習”。ドリルについて、「走りにつなげるためアップというよりは、走りの確認のため行っています」と話しました。

コーチとの出会いこそ、急成長のキッカケ

上山選手の成長に欠かせないのが、「近畿大学」陸上部の井上悟コーチの存在。かつて、短距離選手としてバルセロナ、アトランタと2大会連続でオリンピックに出場した経歴をもつ井上コーチ。100m、200mの元日本記録保持者でもあります。

高校卒業後、近畿大学へ進学した上山選手。井上コーチとの出会いこそが、急成長のキッカケとなりました。

「最初に見たときから200m選手で、リレーの3走を目指せば日本代表になれると思った」と上山選手との出会いを振り返る井上コーチ。「昔話なんですけど、自分が200mの日本記録をもっていたので、上山で奪還したいなと思っています。日本代表を続けていったのちに、日本記録(20秒03秒)を目標にしたいと思っています」と上山選手への期待を語ります。

自分の適性を見定めてくれたコーチとの出会いを経て、日本代表ランナーに成長した上山選手。大学卒業後も井上コーチの元で、パリオリンピックを目指すことを決めました。

「コーチに常に言われていたのが、"パリに行くぞ"。コーチに言われたらやるしかないので」と井上コーチとの会話を笑顔で話す上山選手。
たまにダメもとで、"練習これで終わっていいですか?"、"1本減らないんですか?"とお願いするときもあるそうで、そのたびに「この1本がパリに行く」と井上コーチから諭されてきたそう。「(そのときは)「はい!やります!」(と答えて)、そんな感じでこの冬過ごしましたね」と、井上コーチとの練習中のやり取りについて明かしました。

コーナーを“直線のように”走る体幹の強さ

上山選手の走りの一番の魅力について尋ねると、「身長があるわりにはコーナーでラインのギリギリを走っても外に膨らまない。コーナーを直線のようにスムーズに走れるのが魅力」と答えた井上コーチ。上山選手も自身の走りについて、「直線の100mより、コーナーの100mの方がタイムが速いんですよ」と話します。

コーナーを“直線のように走れる”とはどういうことなのでしょうか。
一般的にはコーナーで体を傾けると、上山選手曰く、「脇をつぶすような窮屈な走り」になってしまいがち。体が曲がると軸が曲がり、地面からの力が真っすぐ伝わらないのだそう。

そんなフォームになりがちなコーナーで、“あえて逆の動きを入れる”という上山選手。「腕でイメージすると、普通は外側の方を大きく振っちゃうけど、僕は逆に内側を大きく振ります」と自身のフォームについて話します。確かに上山選手のコーナーを走る際の動きに注目してみると、外側より内側の腕の動きの方が大きくなってるのがわかります。

そして、もうひとつのポイントが。リレーのバトンゾーンを指しながら、「僕は200mでこのリレーゾーンを大事にしています」と話す上山選手。「みんな速く走ろうと思って、足を伸ばして歩幅を広げようとするけれど、逆にそれがダメ。リレーゾーンは階段を一段ずつ駆け上がるイメージ(で走っています)」とコーナーの走り方についても明かしました。

ライバルたちとの激走!パリ五輪に向けた戦いへ

そんな上山選手が5月19日、パリオリンピック選考レースの前哨戦とも言われる大会「セイコー ゴールデングランプリ陸上」に挑みました。迎えた、男子200m決勝。決勝には、2023年アジア選手権金メダリストの鵜澤飛羽選手、ロンドン・リオ・東京五輪代表の飯塚翔太選手などが出場。上山選手にとって、今シーズン初めてとなるライバルたちとの対戦です。

レース序盤、得意のコーナリングでトップとなった上山選手。しかし、終盤で粘りきることができず、結果は6位となりました。

パリ五輪最終選考会となる日本選手権を1か月後に控えた上山選手。「日本選手権は優勝にこだわって、強い気持ちで(パリ五輪の切符を)勝ち取りたいなと思います」と、日本選手権での巻き返しを誓いました。

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