「三つ子の魂百まで」ってどう解釈する?抱きグセがつくって本当なの?親世代と祖父母世代の“常識”の違いにみる子育ての今と昔
働く母親たちを悩ませてきた“3歳児神話”は
「3歳になるまでは母親が子育てに専念するべきだ」とする「3歳児神話」は、1951年にイギリスの精神医学者であるジョン・ボウルビィが、孤児院などの子どもたちに心理的発達の遅れがあることを調査し、『母性的な養育が欠けていることが原因』としたことが発端だと言われています。
加納准教授は、この母親に限定した理論の歪曲が、母親たちを追い詰める一因になってきたと指摘します。
「母親に限らず、父親でも祖父母でも、保育者でも、信頼できる“特定の大人”になりえます。現代は核家族化し、働きに出る母親も増えました。ただ、昔から母親も農作業などの仕事はしながらも、家族や地域の人たちの力を借りていたんです。子育てを母親ひとりが抱え込まないこと。今ならコミュニティに出ていき、保育所や子育て支援をうまく利用してほしい」
便利グッズの多用や親が干渉しすぎる現代は“子どもが育ちにくい”?
そのうえで、3歳までが、人格形成の基礎を作る大切な期間であるのは確かであると、加納准教授は強調します。
「子どもはコミュニケーションを取りたがっています。絵本を読むのもコミュニケーションの一つ。一緒に食卓を囲む“団らん”も一つ。ハイハイも慣れてきたら大人が障害物になってみたり、ふとんを丸めてみたりして、乗り越えられたときや上手くできた時は精一杯褒める。一緒にがんばること。『小さな失敗を繰り返し、大きな失敗に備える』という意味の“児やらい(こやらい)”という言葉があります。失敗も経験。現代は子どもの主体性に干渉しすぎて、子どもが失敗しないように、転ばないように先回りすることで、育ちにくい環境もある。あたたかく見守る中で様々な体験させることが自立に繋がっていきます」
低下する子どもたちの運動能力 重要なのは“幼少期に体を動かす経験”
さらに、3歳までの経験というのは、心の発達だけでなく、身体の発達にもつながります。
文部科学省が行っている「体力・運動能力調査」によると、現在の子どもの体力・運動能力は、その親世代である30年前と比較すると、ほとんどのテスト項目において下まわっています。
子どもの体力低下が問題視されて久しいですが、これは幼稚園児よりも上の年代に限ったことではありません。松山市の番町幼稚園・新野文織学園長は「この10年あまりで、幼稚園に入園する子どもたちの運動力が目に見えて落ちてきている」と警鐘を鳴らします。
「近年は、子どもの体を固定して座らせるイスや、部屋の中を歩き回れないように囲うサークルなど、便利グッズの多用や、危ないからと行動範囲を狭めることが体力作りの妨げになっている。昔は家の中でも自由に動き回り、日常的に体を動かすことで体力作りになっていたのが、今では体操などが習い事として取り入れられるようになってきたんです」