深刻な津波被害 能登から新潟に漂着した漁船 思わぬ形で持ち主が見つかる 岐路に立つ漁師「 涙がでました」《新潟》
津波により、能登半島から流されたとみられる漁船が糸魚川市や上越市の海岸で見つかっています。地震から4日後、持ち主が見つかりましたが、漁業を再開できるかどうかの岐路に立たされています。
〈被災した漁師 木下太助さん〉
「2メートルくらい堤防が。あの堤防を(津波が)乗り越えてきた」
石川県珠洲市の漁師・木下太助さんです。
膝の悪い妻のためにリフォームした自宅は津波で大きな被害を受けました。
〈被災した漁師 木下太助さん〉
「みんな津波でこういう状態になったんです。地震では大丈夫だったんですけど…。言葉にならん…。命があっただけよかった」
そして案内してくれた港には…
(リポート)
「地震発生から2週間以上がたった今も港には津波で転覆したままの船が残されています」
木下さんは津波警報の解除を待って港の様子を見に来ました。目にしたのは転覆したいくつもの漁船です。
〈被災した漁師 木下太助さん〉
「奥に浮いているうちの左側の小さいほうが自分のだと思う。ロープがこんな状態でロープが切れて(自分の船が)流れていった」
所有する2艘のうち1艘は転覆。
もう1艘はロープがちぎれ、津波で流されてしまいました。
自宅も被害にあったため上越市に住む長男の家に避難していたところ、地震から4日後、“思わぬ連絡”がありました。
〈被災した漁師 木下太助さん〉
「まさかって!息子から(写真を)送ってもらったんですけど…」
木下さんの漁船は直線距離で約77キロ離れた糸魚川市の浜辺で見つかったというのです。
上越市に避難していた木下さんを追いかけるように新潟に漂着していた“相棒”!
〈被災した漁師 木下太助さん〉
「もうびっくり!こんな形で流れてつくもんかなと自分でもちょっと信用できない。もう…本当に涙がでました」
糸魚川市や上越市の海沿いでは木下さんの漁船以外にも漂着が確認されました。
木下さんの船は、地元の漁師に協力してもらい、1月10日に陸に引き上げたということです。
〈上越漁業協同組合 磯谷光一組合長>
「ちょうどこの波のあるここら辺ですね。波でだんだんそっちにいって、その川の向こう側に着いたという感じ。まだ船が傷んでなかった。船の魂が生きているので助けなければいけない。奇跡ですよね、ほかの船も来たけれどほとんどダメですから」
上越市から珠洲市に戻った木下さん。集会所にテントを持ち込み避難生活を送っています。
例年なら、1月はタラ漁で大忙しの時期です。船が見つかった一方、港の被害は大きく、20歳から始めた漁師の仕事を今後も続けるか迷っているといいます。
〈被災した漁師 木下太助さん〉
「これ、いつ復旧するんかね…。能登が全滅状態って感じでちょっとなかなか(今後)どういう風になるんやこれ。自分のパートナーも(今後)廃業宣言されてますしね。どうしようか…どうしようか…うん…」
地元漁協の協力の元漁船はしばらく新潟県内に置かせてもらうという事です。
木下さんは18日から富山県に2次避難する予定です。