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解説・フルーツステーション整備に向けた新年度予算案否決 山形県は撤回へ

2024年3月14日 18:26
解説・フルーツステーション整備に向けた新年度予算案否決 山形県は撤回へ

山形県の吉村知事が整備に強い意欲を示してる県産果樹の情報発信施設「フルーツ・ステーション」整備に向けた新年度予算案が13日、県議会常任委員会で自民党会派の賛成少数で否決されました。常任委員会での予算案否決は今の法律の下では県議会史上初めての異例の事態です。
取材をしている大矢賢悟記者に解説してもらいます。

今回の問題について3つのキーワードで解説したいと思います。1つ目は「そもそもフルーツ・ステーションとは?」です。
「フルーツ・ステーション」は県が寒河江市の県最上川ふるさと総合公園に整備を検討している県産果樹の情報発信施設です。
県はサクランボやリンゴ、ラ・フランスなど県産フルーツの魅力を体験しその歴史を学ぶ情報発信施設だとしています。小中学生や社会人などが農作業や調理を体験する設備やレストランなどが入る予定です。観光客が果物の収穫を体験しながら県内を巡る「フルーツツーリズム」の拠点として吉村知事は建設の必要性を訴えています。整備費用はおよそ20億円が見込まれこのうち新年度予算案には事業化に向け、およそ4800万円が計上されていました。

一見、魅力的な施設のようにも見えますが、どうして議会で反対意見が出ているのでしょうか。

2つ目のキーワードが「立地と費用に疑問」です。
実はおととしフルーツ・ステーションの前段階のプランとして県は果樹王国情報発信の拠点を整備する予算案を議会に出しましたが県議会最大会派の自民党からは費用に対する効果が疑問だといった声があがり撤回した経緯があります。
議会ではこれまで自民党の議員から、「なぜ寒河江市なのか。より適した立地があるのではないか」また「施設の整備のために農家を支援するための費用が削られるのでは」といった懸念の声が出ていました。これに対し吉村知事は寒河江市に建設するのは交通アクセスが良いからだとし、フルーツステーションを拠点とした観光客の周遊ネットワーク整備の必要性を訴えました

否決されたということで今後どういう動きが予想されるのでしょうか。

14日新しい動きがありました。
県はフルーツステーション関連の予算案が否決されたことを受け、新年度予算案を撤回する方針を固めました。県は15日の本会議にステーションに関連する予算を取り下げた新たな予算案を提出する見込みです。予算案は再び常任委員会で審議されその後、採決が行われます。ただ、フルーツ・ステーションの建設計画そのものが撤回されたわけでは今のところありません。

県が予算案を取り下げることで今後、どのような問題が議会に起きるのでしょか?。

最後のキーワードは「深まる知事対自民」です。
予算案撤回の決定について吉村知事は「当初予算の不成立という県民の不利益を避けるため」だとするコメントを発表しました。
新年度予算案の撤回という異例の事態を迎えた県議会。知事と県政野党の自民党との対決姿勢が一層鮮明となった形です。吉村知事の任期満了まで1年を切った中、今後の議会運営が不透明になってきました。