山形県政の課題「インフラ」 進む縦軸の高速道 進まない横軸の高規格道路 山形新幹線の「高速化」も
現職と新人による山形県知事選挙が繰り広げられる中、県政の課題をシリーズで検証しています。4回目は県内の陸路、鉄路、空路の「インフラ整備」に注目します。
“車社会”の県内で、高速道路の整備は暮らしに深く関わる課題です。
利用者「待ちに待っていた。良かった」「便利になって良かった。家族で旅行に行く時など大変近くになっていい」
観光や物流面での活性化も期待されています。
吉村知事「山形創生に大いに寄与することを心から期待している」
吉村さんが知事に初当選した2009年、県内に整備が計画される高速道路のうち開通した路線の割合を示す「供用率」は50%で、全国平均の73%を大幅に下回っていました。
そして去年、県内の高速道路の「供用率」は86%まで上昇。全国平均の89%には及びませんが、県土の南北を結ぶ東北中央自動車道を中心に「縦軸」の整備が大きく進展しました。
吉村さんは知事就任後、高速道路の未接続区間いわゆる〝ミッシングリンク〟の解消に向け、政府への要望活動を重ねてきました。
吉村知事「高速道路はつながって初めて効果が出るので、早くつないでいただいて」
県内で進む「縦軸」の整備に対し、遅れているのが東西を結ぶ「横軸」です。
県内の主要な国道に並行し、高速道路並みの機能を備えた3つの地域高規格道路の整備が検討されていますが、その多くが着工に至っていません。
最上町の国道47号沿いに立つ看板。地元の住民や経済団体は、宮城県石巻市につながる地域高規格道路「石巻新庄道路」の整備を長年、訴えてきました。しかし、1998年に「候補路線」に指定されて以降、30年近く進展がありませんでした。
おととし8月には、山形・宮城両県の知事が国土交通省に直接要望。去年4月にようやく「整備計画の具体化に向けた検討を進める」との発表がありました。
もがみ南部商工会佐藤隆会長「もどかしかった、本当に。仕方がない。県境をまたぐし」
去年7月の豪雨災害。山間を通る国道47号が土砂の流出で全面通行止めになりました。新庄市などにつながる大動脈が1週間近くも寸断されたのです。
もがみ南部商工会・佐藤隆会長「“陸の孤島”と言っている。去年7月の豪雨では八方ふさがりの町になってしまい、大変な目に遭った」
7月の豪雨の影響でいまも、JR陸羽東線の運休が続く最上町。
もがみ南部商工会・佐藤隆会長「国とのパイプがないとおそらく実現しないと思う。パイプを太くしてもらい、次の4年間で姿あるものにしてほしい」
一方、鉄道では、山形新幹線の高速化と安定運行に向けた検討が進められています。
県は2022年、福島県境のトンネル整備の早期実現に取り組むことでJRと合意しました。現在、具体的なルートに関する調査が行われており、およそ1500億円とされる事業費の負担割合などはまだ決まっていません。
吉村知事「山形県の未来を開く希望のトンネル。政府への働きかけを重層的に行い、1日も早い事業化につなげてまいりたい」
そして空路では山形・庄内両空港の滑走路を現在の2000メートルから2500メートルに延長する計画について、去年から本格的な検討が始まりました。
吉村知事「有事のためにもっと広くしておくことは大事だし、平時においても滑走路が短いゆえに行きにくいと台湾やシンガポールで言われたことがあるので不利だなと」
今回の知事選で現職の吉村さんは、インフラの整備を公約で掲げた5つの柱の中に盛り込みました。
吉村知事「山形新幹線の米沢トンネル(仮称)などの社会資本(インフラ)の整備促進、医療提供体制、これも県民の皆さまにとって重要なインフラだと考える。提供体制の確保にもしっかりと取り組む」
一方、新人の金山屯さんは、高速道路のトンネル内の制限速度を50キロに引き下げることを公約に掲げています。
金山屯候補(無・新)「高速道路のトンネルのスピードを抑えることは、山形県が観光で客を呼ぼうとしても、入り口が危険で事故が起きたらとんでもないことになるので」
暮らしの利便性を向上させる一方で、巨額の費用を伴うインフラ整備。県政トップの判断力と行動力が求められています。