『オシャレ魔女 ラブ and ベリー』生みの親を取材 “親子の会話のきっかけに”ゲームに込めたこだわり
『オシャレ魔女 ラブ and ベリー』は、2004年~2008年まで全国のアミューズメント施設などで稼働していたキッズ向けのカードゲーム。『オシャレまほうカード』を使ったファッションのコーディネートと、音にあわせてタンバリンをたたくリズムゲームが組み合わさった対戦ゲームで、当時小学生を中心にブームとなりました。
今年で20周年を迎えたということで、記念の展覧会が9月16日まで東京・池袋PARCOで開催され、愛知・大阪でも開催が予定されています。当時の開発資料やゲームに登場する衣装に加え、歴代の『オシャレまほうカード』1500枚以上などが展示されており、初日には事前予約制のチケットが完売するなど今も人気となっています。
■ゲームに“着せ替え”を取り入れた理由
そもそも、なぜ“ラブベリ”を制作することになったのか? 当時、開発を担当した株式会社セガの近野俊昭さん(53)に話を伺うと「当時、同じ部署で男の子向けのゲームとして『ムシキング』を作っていたんで。その中で、“男の子だけじゃなく、女の子もターゲットにしたゲームを作ろう”というところがスタートで。『ムシキング』と対をなす女の子向けのゲームということで、『ラブ and ベリー』の企画がスタートしました」と明かしました。
ゲームに“オシャレ”の要素を取り入れた理由については、「女の子が小さな頃から普遍的に楽しんでいる遊びとして、“着せ替え”というのが1つのテーマにあったと思うんですよ。それはお母さんもきっと体験しているし、お子さんも体験している。親子が同じ目線で話ができ、みんなで楽しくゲームができる、そんなゲームを作りたかった」と、親子の会話のきっかけとなることが狙いだったということです。
■渋谷、新宿、池袋…衣装のアイデアは“街”からも
Y2Kファッションの流行もあり、現在でも“かわいい”と評価されている『オシャレまほうカード』の衣装たち。当時、どのように衣装を考えていたのか伺うと、「ファッション雑誌は、上だと30代向けの雑誌から10代向けの雑誌まで全部見た」と、当時のほぼすべてのファッション雑誌に目を通し、アイデアの参考にしていたといいます。
ただ、近野さん自身はお子さんが2人とも男の子だったため、「全然、女の子の世界が分からなかったんですよ。それこそ街に出て、女の子のはやりは何なのかというのを(チームのみんなで)話したりとか、一緒にやっている女性のデザイナーと色んなディスカッションをしながら、“どんな遊びをやってきたのか、どんなものに憧れをもってきたのか”っていうのを一生懸命学ぼうとしていました」と語りました。
実際に、近野さんが足を運んでいた街については「渋谷、新宿、池袋とかそれぞれ街によってカラーがあると思うので、どの街をテーマに衣装を考えようかというのも参考にさせていただきました」と、街ごとに異なるファッションも衣装のヒントにしていたということです。
■「かわいく見せるために」バーコードにも工夫が
“ラブベリ”では、プレーするごとに髪型・服・靴などが描かれた『オシャレまほうカード』が1枚もらえ、そのカードのバーコードをゲーム機にスキャンすることで、キャラクターをステージに合ったコーディネートに着せ替えることができます。こうしたカードのコレクション性も、人気に火がついた要因だといいます。
近野さんによると、『オシャレまほうカード』の細部にまでこだわりがあったそうで、「当時男の子向けの『ムシキング』では、(カードの)左右にバーコードがついていたんですが、『ラブ and ベリー』は片側にしかついていない。そこには、服をより大きく見せたいっていうのがあったりとか。あとは、今までバーコードって白黒だったんですよ。でも、『ラブ and ベリー』は、ピンクのベースに水色のラインっていう、当時見たことないようなバーコードのデザインにしている」と、明かしました。
「白と黒だとあまりにもカッコよくなり過ぎちゃうので、かわいく見せるためにはどういうことができるんだろう。バーコードをきちんと読み込まなきゃいけないので、どんな色の組み合わせだとエラーなく読み込めるんだろうっていうのを試行錯誤しながら色を決めました」と、細部にまで“かわいい”を追求したことを語りました。
■「お子さんに伝えてほしい」ディスコステージに込めた思い
“ラブベリ”には、『ストリートコート』や『アイドルステージ』、『ディスコ』など全6種類のステージが存在。ステージやキャラクターに合ったファッションをコーディネートすることで、得点にあたる『オシャレパワー』が評価されます。
『ディスコ』ステージについて、近野さんは「ここは当時のお子さんというよりも、お母様方お父様方が(懐かしむ)いわゆる“ディスコ”というサタデーナイトフィーバー的な60年代~70年代にかけてのディスコのイメージ。懐かしんでもらいながら、青春時代を過ごしたものをお子さんに伝えてほしいな」とステージを作る上でも、親子の会話を意識していたといいます。
最後に、“今後『ラブ and ベリー』に期待すること”を伺うと、「20周年にとどまらず、30周年、40周年とかに向けて、今の20代の方がさらにおばあちゃんになった時に、お孫さんに対して色んな思い出を語れるような、そんなIPになったらいいな、そうしていきたいなと思っています」と、今後の展望を明かしてくれました。