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「結婚はできない、普通の生活もできない」 同性愛者の “諦め” を変えてくれた人生のパートナー 

2023年6月3日 22:05
「結婚はできない、普通の生活もできない」 同性愛者の “諦め” を変えてくれた人生のパートナー 
(左から)フランスで同性同士で結婚した竹田純さん、クリスさん
日本では同性婚をめぐる法整備の遅れや世間の理解不足からくる差別など、まだまだLGBTQを取りまく課題が問題となっています。そんな中、同性婚が10年前に認められたフランスで、男性のパートナーと結婚した日本人男性がいます。フランスで活動するバレエダンサーの竹田純さん(40)です。竹田さんは2023年3月、リトアニア出身のインテリアデザイナーのクリスさん(34)と結婚しました。

現在は、バレエをベースに考案したエクササイズを発信しながらフランス中央部に位置するブロワという町で、クリスさんと愛犬と共に幸せに暮らしている竹田さんですが、それまでの道のりには、同性愛者であることが周囲に知られるという不安や恐怖、自身のセクシュアリティーに思い悩んだこともあるといいます。今までどんな人生を歩んできたのかお聞きしました。

■周囲に理解してもらえない“つらさ”より“諦め”の気持ち

――ご自身が同性愛者であると周囲に伝えていましたか?

竹田:私は言えなかったです。ずーっと…。言ったら変に思われるのかなとか、いじめとか怖かったので(本当の自分は)出せなかったですね。結果的に怖がっていたのでバレてしまっていじめられたというか…。学生時代は部活とか男子テニス部だったんですけど1回も行かなかったです。積極的に行くっていう心がなかったんです。言いづらいし両親にも言ってないですし、気づいてほしかったんですけれども、(理解してもらえないと思って)“諦めていた”っていうところはすごくあります。

■「こういう世界もあるんだ」日本と違うフランス文化

2016年に共通の友人の誕生日パーティーで出会ったという2人は食事などを重ねて交際がスタート。日本でしばらく過ごした後、クリスさんの仕事の都合によりフランスに移住しました。フランスでは2013年5月より同性同士での結婚が認められるなど、国内のLGBTQに対しての認知度や理解度が高いといいます。そんな多様な文化の中で暮らした竹田さんは、これまでふさぎ込んでいた自身の気持ちにある変化が芽生えたそうです。

――日本とフランスとの違いはありますか?

竹田:日本は“カテゴリーとして見る”というといいますか、フランスって普通に見てくださるから、わざわざ「ゲイなんだよ」って言わなくてもいい。表現もしなくてもいい。こういう世界もあるんだって(フランスで)肩の荷が降りたみたいな感じです。

――肩の荷が下りてどんな行動を取りましたか?

竹田:(クリスと)一緒に話し合って、(インスタグラムの投稿を)ポチっと押して世間に発表しました。もちろん好きではない人たちもいるだろうなというのはすごく怖かったです。ですが応援してくださる方もいて、こんなにも(本当の自分を)受け入れてくれるんだって初めて思って、「自分の息子が同性愛者なんです」とか「自分が同性愛者なんですが希望が持てました」とか言われて、そういう方々に“希望を与えることができてるんだ”っていうのもすごい嬉しかったです。

――公表した後で良いことはありましたか?

竹田:良いことはやっぱり“クリスといる”っていうことに対して(世間に)言えるってことです。これはすごく大きかったです。

クリス:外にいる時も自然にできるし、エクササイズの生徒さんと話している時も本当に自然に話せているからすごく楽になったと思います。

■「結婚できたらいいな」 クリスさんとフランス文化との出会いで気持ちに変化

さらに竹田さんは、自身のセクシュアリティーを打ち明けたと同時に発表したのは、自分とは無縁だと諦めていた結婚でした。その結婚という決断を後押ししてくれたのもフランス文化とパートナーのクリスさんでした。

――結婚したいと思った理由はなんですか?

竹田:昔から自分は“結婚はできないだろうな、普通には生活できない”ってずっと諦めていたんですけど、クリスと過ごしていたらすごい優しかったんですよね。いいなって思った時にフランス住んでいて(同性同士の)結婚っていう形もあるんだと思って…。

――結婚することは両親に報告はされましたか?

竹田:結婚する直前まで言わなかったです。結婚するにあたって書類とか必要だったので、家族の人に頼まないといけなくなってしまうので、お姉さんとかお母さんに言ってたんですけど、“いつお父さんに言おう”っていうのはすごく考えてたんです。お父さんは結果的にいうと今でも背を向けているというか、(同性愛者のことは)理解できないみたいですね。一方で、お母さんからはお祝いの手紙をいただいて。「これからお互いリスペクトして大切にして生きてください」っていうこと、「昔はこうだった純。例えばどこかへ行くってなったら玄関でずっと待ってた純。ずっと仕事の時もずっとここにしがみついて…」とかつづられていてすごく感動しました。お母さんは昔から(私が同性愛者であることを)ちょっと感づいていて、受け入れてくれていたんだなっていうのはすごく思いました。

――結婚した当時の心境はどうでしたか?

竹田:(婚姻届けを出す時に)市長さんが「私達、フランスはどんなカルチャー文化を持っていても、どんな国籍を持っていても色んな人種がいても、私たちはあなた達に愛がありましたら受け入れます」って言われた時に、それが“ガーン”って胸に刺さって…。その言葉を聞いた時にすごく感動しました。

クリス:フランスだったらもう“同性婚”じゃなくて“結婚”ってなります。もう(結婚に関して)カテゴリーがないということです。

――諦めていたという結婚という一つの夢がかないましたが、これから2人でかなえたい夢はありますか?

竹田:一つの夢としては子供が欲しいですね。養子縁組っていう方法がありまして、聞いたところフランスの同性愛者の養子は難しいみたいです。(手続きなどで)10年くらいかかるそうです。

クリス:子供は4人ほしいですね。

■「みんな愛を持つ権利がある」 自身のセクシュアリティーに悩む人に伝えたいこと

クリスさんとの出会いや、日本とはまた違う多様な文化のフランスで過ごしたことで人生が大きく変わったという竹田さん。最後に、かつての自分のように悩む人たちへ伝えたいことがあるそうです。

――以前は“諦めていた”という竹田さんのように悩んでいる方々が世の中にたくさんいると思います。その方々に向けて伝えたいことはありますか?

竹田:小さい時から私はお父さんとかお母さんに気づいて欲しかったっていう思いはすごくあるんですけど、それはあくまで自分の思いです。お父さんに言われているような言葉っていうのは“お父さんの考え”で、(フランスと)日本の法律は違うけれど、こうなりたいって思っていたその願望がクリスと出会うことができたと思うんです。思考とかそういったもので絶対結果に繋がると思います。

クリス:自分のことを受け入れることはすごく大切だと思います。人生には愛がたくさんあります。色んな愛の形があります。「I think everyone deserves love in their life(みんな愛を持つ権利がある)」