×

元宝塚・瀬戸かずや、コロナ禍でなければ表舞台に立ち続けることなかったかも――変わってしまった卒業の形「このままでいいのかな」

2022年11月11日 20:00
元宝塚・瀬戸かずや、コロナ禍でなければ表舞台に立ち続けることなかったかも――変わってしまった卒業の形「このままでいいのかな」

舞台やドラマに幅広く活動する元宝塚歌劇団・花組男役スターの瀬戸かずやさんは、退団時に新型コロナの影響を受ける形となった。当初は退団後に表に出る仕事をメインにするとは強く思っていなかったと言うが、「このままでいいのかな」という思いがあったという。一方、飛龍つかささんは声を使った仕事に興味があると話す。活躍の幅が広がるタカラジェンヌの“その後”に、熱烈な宝塚ファンである日本テレビアナウンサーの安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が迫った。(・後編の後編)

■聖地「宝塚大劇場」の思い出

【宝塚をキーワードでひもとく「アプレジェンヌ辞典」】
本日のキーワードは「宝塚大劇場」。言わずと知れた宝塚歌劇団の本拠地にしてファンの聖地。2550席の大劇場と526席の小劇場・バウホールを有し、公演にちなんだメニューも楽しいレストランや各フロアにある売店、宝塚歌劇の殿堂、ラインダンスや大劇場デザインの消印が押される郵便局、タカラジェンヌ変身写真が撮れるステージスタジオなど、まさに1日いても飽きない夢の空間。ロビーで出迎える大階段でタカラジェンヌ気分を味わってみては。

(安藤アナ):ファンはテンション上がりっぱなしの大劇場ですね。瀬戸さんは大劇場のお気に入りの場所はどこですか。

(瀬戸さん):お気に入りの場所ですか。大劇場でいいますと大階段から見るパレードの時の景色とか。

(中島アナ):そっち側ですね。

(瀬戸さん):そうですね。過ごすのはそっち側の方が多いので。もう本当に圧巻ですし、舞台上、オーケストラ、そして客席のお客さまも全てが一つに見えるので、贅沢でありがたい。ここを目指して良かったと毎回思える空間ですね。

(安藤アナ):飛龍さんは退団されたばかりですけれど、いかがですか。

(飛龍さん):大階段は私もやっぱり大好きですね。宝塚大劇場は東京の宝塚劇場と比べてもさらに大きいので。その大きさを実感できる大階段からの景色は忘れられないです。あとはスポットライトがすごい。周りが何にも見えなくなるくらいの強い光。人生そう浴びることがないですよ。

(瀬戸さん):なんかこう舞台を見ていると普通に見えるじゃないですか。こちらから見ると真っ白なんですよ。あまりにも照らされすぎて。

(中島アナ):そんな中でもしっかり目を開いて、お客さんの顔を見ながら演じる。

(瀬戸さん):なかなか不思議な空間になります。

■コロナで変わってしまった卒業の形

(中島アナ):この宝塚大劇場を卒業されたお二人に、退団後のお話を伺ってまいります。瀬戸さんはご卒業から丸1年たったところ。以前のインタビューでは「時間の流れが変わった」とお話をされていましたが、その後はいかがですか。

(瀬戸さん):そうですね。相変わらずやはり宝塚で過ごした時期よりは、時間の流れ方は違うんだというのは日々感じます。ただペースをつかめてきたかな。朝起きて愛犬の散歩へ行って。バランスが見つかってきたかなと感じています。

(安藤アナ):退団後は、印象に残っているお仕事はありますか。

(瀬戸さん):これまで舞台しか経験してこなかったので、ドラマという新しい制作の形を目の当たりにすることができたのはすごくいい経験、新しい発見でした。私はテレビドラマを見るのが大好き。「一気見」するのがすごく好きなんです。このワンカット・ワンシーンにどれだけ皆さまの労力が込められているのかということを知れたことが良かったです。「本当にいつもありがとうございます」と思いました。

(安藤アナ):瀬戸さんは退団の時も新型コロナの影響を受けました。退団されてからエンターテインメントの道、表現者の道に行こうという思いが強かったんですか。

(瀬戸さん):当初はあまり表に出る仕事をメインでやっていこうとはあまり強く思っていなくて。

(飛龍さん):意外です。

(瀬戸さん):ってよく言われるんですけど。コロナという世の中が本当にひっくり返ってしまって、今までできていたことができない。ファンの方々と会うことができない。「卒業」というものを皆様に一つ一つ味わっていただいて辞めるというこれまでと、本当に形が変わってしまった。何かこのままでいいのかな。皆様にお返しできていないんじゃないかなと。

自分もファンの方もちょっと消化不良じゃないですけれど、このままではいけないなと私はすごく感じていたので、自分が何かをできることがあるなら、皆様に届けていけたらいいかなと思って頑張っております。

(中島アナ):コロナでなかったら、もしかしたら今やってないかも?

(瀬戸さん):かもしれないですし、分からないですけれど。本当にありがたいことに多方面のお仕事をさせていただける。「人に笑顔になってもらいたい」とこの1年、一番思いましたので、いろいろな形で皆様に笑顔や楽しい何かをお届けしたいなと思います。

■飛龍さん「声を使った仕事に興味」

(中島アナ):幅広く活躍されているOGの方を見て飛龍さんはどのように感じていますか。

(飛龍さん):憧れです。私も同じように人を笑顔にすることが好きなので、そうしたことに携わっていきたいなと思います。色々な道を切り開いてくださっている上級生の方々がたくさんいらっしゃるので、それもありがたいなと思います。私もそれに付いていこう、自分も新しい道を開拓しようと夢を抱いてついていきたいです。

(中島アナ):例えばどんなジャンルに挑戦したいですか。

(飛龍さん):声を使ったお仕事にすごく興味がありまして、声優さんとして声を使った表現者になりたいなと今、夢を描いております。 

(安藤アナ):瀬戸さんは、この夢をご存知でしたか。

(瀬戸さん):もともとアニメやゲームが好きなので、例えばカラオケで歌ったりとかなった時のとても楽しそうな彼女を知っているので。そういう話もしたかな。まさに今、そうやって夢を持って動いてくれるのはうれしいなと。

(飛龍さん):ありがとうございます。

(中島アナ):退団後の姿は本当に様々に広がってきていますね。

(瀬戸さん):宝塚を卒業したらこうしなきゃとか、舞台に立つんだとか。ルートが決まっているような気がしていたんですけれども、そうじゃなくてもいいんじゃないかなと。私、ちょっと天邪鬼なところがあるので。

もっと色々できるんじゃないかと漠然と思っていたんです。世の中も時代ごとに変わっていって、今は本当に自分がやりたいこと、いいと思うことを胸を張ってできる時代かなと思います。大きな目標はまだないんですけど。宝塚を卒業したので、何でもできる。不安でもありながら夢もあるし、前向きに取り組んでいきたいなと。

(飛龍さん):いい時代に卒業させていただけたんだなと思います。

(中島アナ):男役を終えたその先も少しずつ変わっているような気もしますね。

(飛龍さん):こんな格好で歩いていても溶け込める。

(瀬戸さん):私も一回、普通にならなきゃと思ったんですけど、そもそも宝塚の男役という職業を選んだ時点で普通じゃないなと思えました。無理して自分が普通にならなくてもいいんだな、宝塚の男役を経たこれが私なんだとちゃんと思えたので、その人がどんな活動していくのか、私も楽しみなところはあります。

世の中の素敵な女性らしい格好、女性らしい振る舞い、髪が長いとかヒールを履くとか、今まで男役として「絶対にこれをしない」と自分で全部壁を作っていたんです。それをとっぱらった時に、全部やっていいんだとなった時に、逆にどうしていいかが分からなかったり、女性らしさって何だろうと思ったり。無理してそれを取得しなきゃいけない気がしたんですよ。もう男役は終わったから、ちょっと無理していた時もあったんですけど。

自分が着たい服を着たい。もっと自分らしくていいんだ、別にこれまでの宝塚の男役の私でいいんだ。元宝塚の男役の私が似合うものでいいんだ、と。葛藤はありましたけれど。

(中島アナ):男役を経たタカラジェンヌさんだからこそ、世の中に提示できるものがありそうですね。

(瀬戸さん):お仕事をいただく中で、こういう私でもいいんだなと思えるお仕事もいただけるので。

(飛龍さん):これからのあきらさん楽しみです。ファンみたいな感じで。

(中島アナ):本当にお二人とも今後が本当に楽しみです。

■宝塚で学び生きていること

(安藤アナ):最後に一つ質問にお答えいただきたいと思います。宝塚で学んだことで一番生きていることは何でしょうか。まずは瀬戸さんからお願いします。

(瀬戸さん):こちらです。「感謝の心を忘れない」。宝塚を卒業して1年経ちましたが、日が経つごとになんて素晴らしいところにいたんだろう、なんて色々なことを学ばせていただいたんだろうと、宝塚への感謝の思いがどんどん大きくなっていくんです。こうして今、自分が地に足を着けてお仕事できるのは、やはり宝塚があるからだと本当に日々感じます。お客様、ファンの方々に支えられて、常に感謝を持って生きていきます。

(安藤アナ):飛龍さんもお願いします。

(飛龍さん):「人生に無駄なことは一つもない」です。私が退団直後、あまり日にちが経っていないので、この言葉を選びました。また1年経ったら違う気持ちになるかもしれないのですが、大好きな宝塚に立たせていただいた日々は、本当にかけがえのない時間でした。でも楽しいことばかりではなかった。夢を追いかける中で、苦しいことも辛いことももちろんたくさんあって、今はその時間も全て必要なことだったんだな、と。本当に無駄なことって一つもないと痛いくらい身をもって学ばせていただいたので、この言葉を胸にこれからも頑張っていきたいと思います。

(中島アナ):それぐらい濃密な時間でしたか

(飛龍さん):もう一つも取りこぼせないくらい悔しい経験もあったから楽しいことがある。そう感じられるところが宝塚で学んだ大きなことでした。

(安藤アナ):あっという間に時間も流れてきました。瀬戸さん、下級生と一緒の出演はどうでしたか。

(瀬戸さん):いつもこの笑顔でいてくれるので、隣にいて心を温かくさせてくれるし、一緒にお仕事できることが本当に幸せです。うれしいです。

(安藤アナ):一方の飛龍さん、瀬戸さんとの時間はどうでしたか。

(飛龍さん):本当に今日は、どうなってしまうのだろうと緊張がずっとありました。瀬戸さんがいらっしゃることが分かっていたので、「瀬戸さんがいるから大丈夫」とずっと安心して、収録の場という経験をさせていただきました。良い意味で宝塚の中も外も変わらず、温かく迎えてくださる方がいて、楽しみに待ってくださるお客様がいて。今後は変わらず続いていく人のご縁をこれからも大切にしたいなと思いました。

◇ ◇ ◇

アプレジェンヌ 〜日テレ大劇場へようこそ〜』は日テレNEWS24のシリーズ企画。元タカラジェンヌをお招きし、日本テレビアナウンサーで熱烈な宝塚ファンである、安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が、ゲストの宝塚時代・退団後の生き方に迫ります。次回ゲストは元宙組トップスターの凰稀かなめさんです。

  • 日テレNEWS NNN
  • カルチャー
  • 元宝塚・瀬戸かずや、コロナ禍でなければ表舞台に立ち続けることなかったかも――変わってしまった卒業の形「このままでいいのかな」