中村芝翫 化粧風景をノーカット公開
歌舞伎俳優の中村芝翫さんが楽屋で撮影した化粧風景をノーカットで公開。弁慶の“隈取”に込められた色の理由などを語ってくれました。
現在、歌舞伎座『六月大歌舞伎』第一部「御摂勧進帳」(28日千穐楽)で、7年ぶりに“武蔵坊弁慶”を勤めている芝翫さん。勇猛かつ稚気のあるお役で、赤や黒の化粧で描かれた顔の隈取が弁慶の強さを表現しています。
そこで芝翫さんに弁慶の隈取にはどんな意味があるのか伺うと「この『御摂勧進帳』の弁慶というのは、あらけずりのようですけど顔は鳥居のようになっているんですね。細かく描く部分が多いもんですから結構時間がかかるんですよ、僕は30分ちょっとかかる感じしますね」と弁慶の隈取の特徴を明かしてくれました。
実は隈取に使用される色にもそれぞれ違いがあるそうで「歌舞伎の“隈取”って一目瞭然で、すごくわかりやすくて、隈って基本的に血管が表れているんですよ。言葉悪いですけど、人が怒ったりすると、『どうしたの?そんなに青筋たてて』と言いますよね。それと一緒で“隈”って血管が浮き上がってきたということの象徴ですよ」と説明。
さらに「基本的に“赤い色の隈”って言うのは“スーパーマン”ですよね。善人である、人を助けるとか、正義に満ちあふれている血の色と言うことで赤を用いていますよね。また、“青い隈”は、悪い人ですよね、裏でなんか糸を操っている人とか、悪事を振るっているという人が青い隈が多いですよね。また、“茶色い隈”これは妖怪だとか化け物、そういうのが茶色であるという、うまく色々分かれていますよね」と化粧の色で役の違いがあることも語ってくれました。
さらに、意外な隈取もあるといいます。「これは普通やらないなというのが赤っ面っていうのがあるんですよ。赤のベースに赤で隈をとるんですよね、これ考えられないんですよね、だけど映えるんですよ。それが、歌舞伎のお化粧方法であり、衣装のコスチュームっていうのは見ているだけで楽しめるものじゃないかなと思いますね」と。
※今回、芝翫さんにお願いし、“弁慶”の化粧風景を撮っていただきました。筆と指先を使いながら紅の線で鳥居の部分を描き、そして墨を使い眉毛や口元に色をのせていきます。微調整をしながら約30分程で完成しました。