仲代達矢 92歳「うまい役者になりたい」 現役を貫く原動力と体力づくり
仲代さんは、19歳のときに俳優座付属養成所に4期生として入所し、俳優人生をスタートさせました。その後、黒澤明監督の映画『用心棒』『影武者』『乱』をはじめ、日本を代表する名監督の作品に数多く出演し、映画、ドラマ、舞台など幅広く活躍しています。
一方、1975年には俳優を育成する『無名塾』設立。若手俳優の指導にも力を入れています。これまでの功績が評価され、2007年に文化功労者、2015年には文化勲章を受章しました。
そして5月30日からは、仲代さんが名誉館長を務めている石川・能登演劇堂で無名塾 能登限定公演『肝っ玉おっ母と子供たち』で主役を務め、約1か月で20公演に挑みます。
■92歳で挑む主演舞台の体力づくり
――主演舞台に向けてどのような体力づくりをされていますか?
毎日、45分間軽い体操をやっています。歩きながら、走りながらやっています。同時に発声訓練です。低い音、中音、高音、役柄によって私はちょっと変えていくもんですから、どの程度の高さ、速さ、力強さなどを訓練しています。45分間の軽い運動が私のからだを支えてるのかなという気がします。
舞台『肝っ玉おっ母と子供たち』は、戦火の中を渡り歩く商人のアンナと子どもたちの姿を描いた反戦劇です。仲代さんは、3人の子どもを育てる主人公・アンナを演じます。当初2024年10月から上演される予定でしたが、能登半島地震で建物が被害を受けたため延期となっていました。12歳のときに東京大空襲を経験したという仲代さんは、戦争をテーマにした作品を通して伝えたいメッセージがあるといいます。
■戦後80年「戦争は弱いものが一番犠牲に」
――戦争を経験されたからこそ作品を通して伝えたいことは?
主人公は「戦争は反対だ」って言っているんじゃないんです。戦争のために戦争で食べていかなきゃならないんだというところが非常に悲しい作品です。戦争は弱いものが一番犠牲になっていくんだとそういうメッセージがちりばめてあります。
――稽古はどのくらいされていますか?
個人の稽古は1年間続いています。だいたいセリフは入っていて、あと動きやみんなとの絡み合いが演劇の稽古ですから、それは3月には始まります。それまで一人稽古や気の合った若者たちとやっています。
■92歳 現役を貫く秘けつ「俳優としての訓練が楽しみ」
――日々の楽しみや趣味はありますか?
俳優としての訓練が楽しみです。「きょうはきのうより声が出たな」とか人間を演じるということは、自分以外の人になる。いろんな人間を演じるということが非常に面白みを感じるんです。自分じゃない性格のやつを演じるってのはすごくいいものです。
――92歳で主演舞台に挑みますが、俳優を続けていく原動力は?
うまい役者になりたいからです。私はヘタクソなもんですから、人の10倍努力しなきゃいけないと思って、若いときからやってます。とにかく訓練だけはしてます。本業俳優としての訓練ですね。それが私を支えてるんでしょうね。これからも頑張っていきたいと思ってます。