『アオハライド』漫画家・咲坂伊緒にインタビュー 制作秘話明かす「こんなに長いこと描くとは」
■原画展開催への思い
原画展『咲坂伊緒展 アオハルノキオク』(3月12日~3月24日)は、『ストロボ・エッジ』『アオハライド』『思い、思われ、ふり、ふられ』『サクラ、サク。』の4作品から成る原画展です。カラーイラストや、直筆原画などが展示されます。
――開催への思いを教えてください
(原画の)現物を出して見ることはまず、ないので、正直漫画が昔のものだったりするから、自分の中では恥ずかしい方が勝っているんですけど、読者の方が一人でも喜んでくれるんだったらっていう気持ちでいます。
■漫画家の活動を振り返る「まさかこんなに長いこと描くとは」
咲坂さんは、2007年に別冊マーガレットにて『ストロボ・エッジ』の連載を、2011年に『アオハライド』の連載をスタートさせました。その後『思い、思われ、ふり、ふられ』『サクラ、サク。』を発表し、誰もが共感する、青春あふれるストーリーや胸キュンシーンを描き、愛される作品を生み出してきました。
――漫画家としての活動を振り返って感じることはありますか?
漫画を描き始めたときに、まさか自分がこんなに長いこと描くとは想像していなかったです。元々、飽きっぽい性格なので“続けよう”とも思ってなくて、本当に想像してなかったですね。
――そもそも漫画家を始めたきっかけはなんだったのでしょうか?
会社勤めが無理だったんです(笑) 毎日同じ時間に起きなくてもいいっていうのが私にとても合っていました。
――漫画家として描き続けられる理由はなんでしょうか?
飽きっぽいのに続けてこられたのは、やっぱり読んでもらって反応をもらえるのが全部喜びになっているから、新鮮な気持ちでずっとできています。みんなが喜んでくれるポイントって、やっぱり年齢は関係なくて、漫画を見た反応は変わらないんだなって。その反応があるから安心して今でも描き続けられるんだと思います。
■描くときの思い「私はわかってあげてるからね」
――様々な個性豊かなキャラクターを描かれてきましたが、描くときに心がけていたことはありますか?
リアルにもしその子がいたら、関わらないで一生を終えるかもしれないタイプの子でも、とにかく理解しなきゃいけない。どんな子でも絶対“私が言い分を聞こう”とは思ってます。アオハライドの洸が私の一番推しで、洸と冬馬で人気を二分していたので、冬馬派からはすごく(洸は)けなされていました。でも、“私はわかってあげてるからね”っていう気持ちでずっと描いてました(笑)
――ストーリーは自身の経験がいかされていたこともありましたか?
どんなにタイプの違う子でも、どこかしらに自分の何か(要素)は入っているとは思うんです。例えば、すごく優しくされたら“私のこと好きなのかも”って思ってしまって、でも人間として優しいだけで私のことは好きではなかった、みたいな経験があります。そんなことを思い出しながら、ナチュラルにこういう人いたなと描いていたこともあります。
■制作秘話明かす「“かわいい…”って思いながら描いていました」
――描いていて憧れたシーンはありますか?
もし自分が体験できたら全部うれしいとは思うんですけど、『サクラ、サク。』のシーンで、主人公の咲のバイトが終わった後に、相手の陽希くんという子がお話しに会いに来てくれるんです。「学校で話せなかったことを話そう」って来てくれる。それ描いている時に“かわいい…”って思いながら描いていました。
■“全員が片思い”の人気作「今まで以上にすごく考えて描いた」
咲坂さんが4作品の中で特に構想を練ったというのが『思い、思われ、ふり、ふられ』。全員が片思いという、同じ高校に通う男女4人の恋心が複雑に交差する物語です。
――当時の制作にはどんな思い出がありますか?
やったことないタイプのストーリーだったので、一つの出来事がみんなにどうやったら作用するか、今まで以上にすごく考えて描いた作品だったなと思います。いつも以上にノートを確認しながらやっていてすごくメモしてた記憶があります。
――漫画家としての楽しさはどんなところにありますか?
頭の中でぐちゃぐちゃってあるものに、いい言葉を見つけて当てはめられたり、何となく思っている映像をちゃんと絵で描けたり、しかもそれが1本のストーリーでちゃんと描けた時は“やった~”っていう気持ちですね。
――今後の漫画家の活動について目標はありますか?
絶対続けてやるぞっていうのは思ってはいないんです。でも結局好きだから描いちゃうのかなっていう気がしますけど、喜んでもらえるものを描ければいいなと。自分も楽しみながら一緒に喜んでもらえるっていう、いいあんばいを見つけながら、描いていければいいなとは思います。