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「まずい」衝撃の表情に読者もビックリ…絵本『パンどろぼう』作家が語る制作秘話

2022年11月9日 6:35
「まずい」衝撃の表情に読者もビックリ…絵本『パンどろぼう』作家が語る制作秘話
(c)Keiko Shibata/KADOKAWA

発売から2年半で、シリーズ累計150万部突破の人気となっている絵本『パンどろぼう』シリーズ。食パンに目と鼻がついた主人公・パンどろぼうの“ユニークなビジュアル”と、物語で見せる“豊かな表情”で読者を魅了しています。作家の柴田ケイコさんに、絵本に登場する“衝撃的な表情”の秘話をインタビューしました。

■衝撃与えたパンどろぼうの「まずい」  目指したのは“見たことのない顔”

8日に発表された『10月期 月間ベストセラー』(トーハン調べ)で、最新作『パンどろぼう おにぎりぼうやのたびだち』をはじめ、全4作が児童書部門の1位から4位を独占した『パンどろぼう』シリーズ。今、人気を集めています。

1作目では、おいしいパンを目当てに盗みを繰り返すパンどろぼうが、「せかいいちおいしい もりのパンや」に忍び込み、大好きなパンを盗むことに成功。しかしこの後、意外な展開が待ち受けています。

「ああ、いとしい いとしい いとしのパン。つやつや ふっくら ほかほかパン」

「さっそく おおきなおくちで『いただきま~す!!』」

「まずい」(『パンどろぼう』より)

盗んだパンが「まずい」というまさかの展開と、パンどろぼうのげっそりとした表情は、読者に大きなインパクトを与えました。この表情を描いたときの秘話を柴田さんに聞きました。

――パンどろぼうの豊かな表情を描くときに気をつけていることは?

そのキャラの気持ちになる。「まずい」だと本当に「まずい」気持ちになって、自分がキャラになって描いたほうが描きやすい気がします。言いながら描いてるんです(笑) 「ま~ず~い~」って。多分そういう時、描いている自分も“まずい顔”しているんじゃないかな(笑)

普通にまずい顔って描いても面白くないと思うんです。“見たことのないまずい顔”を描いた方が、読者も喜ぶだろうなと思って。その方が自分も面白い。割と“まずい顔”はすぐできあがったと思います。

■「食べたくなる…」おいしそうな“パンのイラスト”は研究のたまもの

絵本には、湯気が立ったおいしそうなパンのイラストも登場。SNSでは「食べたくなる」「おなかがすいてきた…」「香りが漂ってくる」など、柴田さんの描く“パンのイラスト”も読者をひきつける魅力の1つです。

――パンのイラストを描くとき、どんな工夫をしていますか?

友達のパン屋さんに行って、パンを作る工程を取材しています。できあがりのパンの形とかも見せてもらったりしました。写実的には私は描けないので、“おいしそうなパンってこんな感じだよね”というイメージで。湯気が立っていたらおいしそうですし。

――パン屋ではどんなところに注目して取材しましたか?

どういう道具があるかを取材の時に見させてもらって。どういう風にパンを並べて、パン焼き機に焼いているかとか、そういうところを写真で撮らせてもらって。(パンを作るとき)こねこねしているのはどういう感じか、見させてもらったりしましたね。

――パンの色に関しては?

何回かテイクバックしながら、編集者と“もうちょっと赤みがあったら”とか色々(やりとりした)。黄色は本当に難しいんです。白っぽいパンもありますし…。そのへんは気をつけて色をつけていきました。

――パンどろぼうがパンを作るときの擬音「パラパラ まぜまぜ」「にゅーっと こねこね」が印象的です。

文章はそんなに自信があるものではないんですけど、“読み聞かせ”をずっとやってきた経験で「読みやすいかどうか」というのと、基本的に説明文にならないように。「おいしく焼けた」なんて見たらわかるし、“オノマトペ”ってリズムがあって読みやすいんですね。「にゅーっと こねこね」というのも、子どもがマネしやすい言葉でもあるし。自分が読みにくいのは子どもが聞いても聞きづらいのかな、と思っているので。そういうところは大事にしたいなって思っています。

――これまで4作を発表。“パンどろぼう”以外にもロールパンの“にせパンどろぼう”、“なぞのフランスパン”など、魅力的なキャラクターが次々と登場しています。今後登場させたいパンの構想は?

いっぱい出したいけどなんだろうな…。あんまり決めてないですね。でも、私が食べておいしいものは出したいなと思っていますね(笑)

――柴田さんが最近食べておいしかったパンは?

お世話になっている友達のパン屋で“ティラミスパン”があって。中にマスカルポーネチーズクリームと、コーヒーあんこが入っている。上はココアがのっていて、それがすごくおいしくて。

――物語が思いついたら“ティラミスパン”が登場する可能性も?

“大人の味”なのでどうでしょう(笑)