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なぜいま電力逼迫?「脱炭素」への重い課題

2022年1月1日 19:57
なぜいま電力逼迫?「脱炭素」への重い課題

過去10年で最も厳しいとの見通しが示された、今冬の電力需給。かつては「安定供給の優等生」とまでいわれた日本だが、近年は厳しい状況だ。なぜいま電力が逼迫(ひっぱく)するのか。その裏には世界が目指す「脱炭素」への転換がある。

■昨年に引き続き…厳しい電力事情

「過去10年で最も厳しい見通し」経産省はこの冬の電力需給についてこう予測している。電力は昨冬も逼迫した。需要に追いつかない地域に対して別の地域から送電する“融通指示”は1か月で200回を超えた。もともと冬は、暖房などで電力の需要が大きくなる時期。

しかし、かつては「安定供給の優等生」とまでいわれた日本で、なぜ近年になって電力の逼迫が起こるのか。背景にあるのは「脱炭素」によるさまざまな動きだ。

■気分屋?な太陽光発電

政府は、2030年度には温室効果ガスの排出量を2013年度と比べて46パーセント削減し、2050年に脱炭素を実現する目標を掲げている。温室効果ガスを出さない再生可能エネルギーへの転換が必要で、中でも短期的に増やすことができると注目されているのが太陽光発電だ。

しかし、太陽光発電は天候によって発電量が大きく左右される。特に、曇りの日が多い冬には、発電量がゼロになる日も多く出てしまう。

電力は、需要にあわせ全体の供給量を調整して、バランスを取る必要がある。再生可能エネルギーの発電量にあわせて、火力発電の量を増やしたり減らしたりすることで、全体の供給量を調整することになる。

■進む火力発電の休廃止

しかし、その“頼みの綱”の火力発電にも問題がある。日本エネルギー経済研究所の小笠原潤一氏は、「再生可能エネルギーが増え、採算の取れない火力発電の休止や廃止が進んでいる」と指摘する。
再生可能エネルギーの発電量にあわせて、火力発電の稼働率を上げたり落としたりすると、発電の効率は悪くなり、採算が取れなくなってしまう。政府の補助制度に支えられた安価な再生可能エネルギーが市場に流れていることもあって、火力発電から手をひく事業者が増えている。

経産省は火力発電について、2016年から2030年までの間に、およそ1853万KW(大型の発電所およそ18基分)供給量が落ちるとしている。転換期ともなる今後数年は、電力逼迫の危機に陥る可能性があるという。

■対応を求められる火力発電、しかし世界は…

こうした中、今冬の逼迫に備えて、政府は休止している火力発電所の再稼働を促すなどの対策を行っている。

例えば、老朽化により長期計画停止をしていた姉崎火力発電所5号機は、1月から2月に期間限定で運転を再開。修繕をしながら、再稼働に備える。

大手電力会社の関係者は、「古い発電所は発電効率も悪くなってしまうが、安定供給を守るためにも、何か起これば稼働せざるを得ない」と話す。

一方で、火力発電に対する欧州の目は厳しい。気候変動問題を話し合う国連の会議「COP26」では、化石燃料使用への批判はさらに強まった。こうした情勢をみて、火力発電所や、発電の燃料となる石炭・石油やLNG(=液化天然ガス)調達への投資は滞っている。

さらに、火力発電に使う燃料価格の高騰が追い打ちをかける。従来のガスより温室効果ガスの排出量が少ないLNGを、中国が「爆買い」。今年は、ヨーロッパではLNGが不足し、電力価格が暴騰している。

日本は昨冬の1月、LNGが手に入らないことが原因で電力需給がギリギリの状態になった。その反省から、この冬は早い段階から在庫を確保したと政府は説明する。

しかし、発電にかかせない燃料の不足・価格高騰は今後も続き、この冬の「10年に一度の厳しさ」は、来冬も、その先も起こる可能性がある。

脱炭素にむけて、世界は大きく舵を切った。しかし、それと引き換えに「安定供給の不安」、つまり、停電が多発し経済に影響が出るかもしれないというリスクを抱えた。日本も安価な電力の安定供給と、脱炭素の「両立」という重い課題が突きつけられている。

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