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白以外はダメ? フェムテック普及に「壁」

2022年1月3日 17:02
白以外はダメ? フェムテック普及に「壁」

女性の心身の健康に関する課題を技術で解決する「フェムテック」への関心が高まっている。ここ数年で国内でも関連商品を扱う企業が急増した。一方で、普及には様々な「壁」が立ちはだかる。法整備の遅れや社会の無理解、さらには「迷信」や「親ブロック」まで…。

■60年前の「壁」

2021年9月、ユニクロが発売した「エアリズム吸水ショーツ」。吸水や防水機能のある布を重ねた下着で、吸水量はおよそ40ミリリットル、一般的な生理用ナプキン4枚分に相当する。洗って繰り返し使用できるので経済的で、ナプキンなどの交換や持ち歩きの煩わしさを軽減できるとして注目されている。

ところが、この商品の発表会で配られたメディア向けの資料には「報道の際、『生理』『経血』といった表現は使用いただけません」との記載が。商品の説明文も「30~40ミリリットルの水分を吸収」とあるだけで、「経血を吸収する」とか「生理の時に使える」といった説明は一切なかった。

日本では生理用ナプキンは「医薬部外品」。医薬品医療機器法(薬機法)によると、生理用品は「白色」で「においがなく」「使い捨て」であると定義されている。ユニクロのものを含め、国内で販売されている類似の吸水ショーツは白以外のものも多い。下着なので使い捨てではない。このため、生理用品とは認められず、明確な効果や効能を謳うことができないのだ。

欧米では、生理用品だけでなく、膣内に挿入して妊娠しやすい時期を測定する機器や、尿漏れを防ぐためのトレーニング機器など幅広いフェムテック商品が普及しているが、日本では「該当するカテゴリーがない」という理由で承認が受けられない。

実は生理用品に関する規定は1961年の薬事法(当時)改正以降、60年間、ほぼ見直されていない。一方で、フェムテックへの関心やニーズは高まっていて、世界のフェムテック関連市場は2025年までに5兆円規模に成長するとみられている。法整備が進まず、品質や効能が保証されないまま関連商品が普及すれば、健康被害につながるおそれもある。「新しいカテゴリー」の法整備は急務だ。

■親も「壁」に!?

さて、生理は「経血が出る」ということ以外に様々な症状を伴う。腹痛、腰痛、頭痛、倦怠感、眠気といった体の不調に加え、イライラや落ち込みといった心の不調もある。しかし、個人差が大きく、症状も人それぞれ違うためか、男性だけでなく女性同士でも理解が進まず、「病気じゃないのだから我慢すべき」と周囲も自分自身も思い込んでいるケースが多い。

埼玉医科大学助教で産婦人科医の高橋幸子氏は「大学の保健室に生理痛でやってきた学生で『若いうちから痛み止めを使っていたら将来効かなくなる』と親から言われ、痛み止めを使わせてもらえない、という子がいた。親自身に正しい知識がないために意味のない我慢をさせてしまう『親ブロック』です。生理は病気ではないけれど、病気と同じようにケアが必要で、生理が始まる前から正しい知識を身につけることが重要」という。

性教育が一般的に遅れている日本では、女性の体や健康について、知識の乏しさから生まれる「迷信」も多い。先進国では当たり前になっている、麻酔による無痛分娩が進まないのも、「痛みに耐えて産まなければ子供に愛情がわかない」という迷信によるところが大きい。

■いまも4人に1人が…

国内で働く女性はおよそ3000万人、日本企業の全従業員の4割以上を占める。かなり大まかな数字になるが、毎月1週間程度の生理があるとすると、いま、この瞬間も女性従業員の4~5人に1人は生理中で働いていることになる。

経産省が健康経営と女性の健康についてまとめた報告書によると、女性従業員のおよそ5割が「女性特有の健康課題などにより職場で困った経験」があり、その内容は、ほとんどが生理とそれに伴う心身の不調によるものだった。こうした不調での欠勤や生産性低下などによる経済損失は、年間6828億円にのぼると試算されている。

生理だけでなく、女性には妊娠や出産、更年期など男性とは違う体調の変化がある。今後、少子高齢化がますます進み、女性の労働力が不可欠となる中、性差を踏まえた従業員の健康管理をないがしろにした企業には人材が集まらず、いずれ競争力を失うことになろう。

“我慢強い”女性が多い日本では、世界で拡散した「#MeToo」運動も、社会全体を根底から揺さぶるムーブメントにまでは至っていないのが現状だ。フェムテックの広がりを契機に、これまでオープンに語られなかった問題や不条理に対して声を上げ、「壁」を打ち破る機運が高まっていくことを願う。

写真:ユニクロの吸水ショーツ ファッション性も重視し、豊富なカラーをそろえる

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