三重高校『初勝利と全国レベルの厚き壁』
第100回全国高校サッカー選手権は三重高校にとって歓喜と屈辱の大会となって幕を下ろしました。
4大会ぶり2回目の全国選手権に臨んだ選手たちは、1回戦で強豪ひしめく埼玉県大会を勝ち抜いた西武台高校と対戦。前半9分に、カウンターから左サイドの14番・北岡勇輝選手(3年)がクロスを上げると、右SBの17番・大地山開(3年)がヘッドで合わせ先制。
その後は終始防戦一方になったものの、集中した守備で1点を守り切り、全国選手権初勝利をもぎ取りました。学校としての新たな歴史の1ページを刻んだ三重高校。しかし、2回戦は群馬県の強豪、4大会前の全国王者、前橋育英高校との対戦に。この試合で全国レベルの厚き壁を三重高校は思い知らされました。
■わずか1本のシュート
押し込まれる展開であることは三重高校の徳地俊彦監督も覚悟をしていました。「かなり強い。攻め込まれる可能性は高いが、攻撃しないともっと苦しくなる。セカンドボールでの争いと相手DFの背後にボールを送れるかがポイント」と話し、臨んだ一戦。
黄色と黒の縦縞、上州のタイガー軍団といわれる前橋育英は容赦なく襲い掛かります。三重高校は前半25分にサイドから崩され先制を許すと、35分には強烈なミドルシュートでさらに失点。一方、三重高校は前半のシュートがわずか1本という展開に。
前橋育英の勢いは衰えず、その後、後半だけでさらに4点を追加され、終わってみれば、0-6の大敗。三重高校は後半にシュートを1本も打たせてもらえない屈辱的な試合となりました。試合終了のホイッスルのあと、ピッチ中央には涙する主将の吉良元希選手(3年)の姿がありました。
■特別な選手権の舞台
吉良選手は「組織力がすごくあって、個人の能力もどんどん出してきて、うまい選手が多くて、たくさんいい経験させてもらったと思います。この一試合で」と悔しさをにじませながらも前橋育英の強さを受け止めていました。後輩たちには「きょうの試合を生で見てもらって、全国の舞台を目に焼き付けてくれたと思うので、これ以上の景色を見るために一日一日を頑張ってほしい」と、その思いを残しています。また「この100回大会という素晴らしい舞台に立つことができて、楽しかったですし、ここからのサッカー人生において大きいバネになる大会にできた」と選手権に感謝し、先のサッカー人生へ歩みを進めることを誓いました。
三重高校を全国選手権初勝利に導いた徳地監督は「この全国大会で自分たちがまず1つ勝つ、2つ勝つという目標の位置が小さい中で、前橋育英はここが過程でしかない進み方をしている。そのレベルに少しでも近づけるように、チーム、学校、地域、自分たちがもっと成長していかなければならないということを経験させてもらえた。20年後、30年後かもしれないが、前橋育英を超えられるように頑張っていきたい」と話しました。
三重高校の100回大会は歓喜と屈辱の選手権となりました。しかし、三重高校はこの経験を胸に明日へ、そして未来へ、全国の強豪を目指した歩みを進めていきます。
(取材・文:高校サッカー選手権民放43社/三重テレビ放送)