訴訟から医療の現場まで…AIで変えた男2
株式会社FRONTEO・守本正宏社長に聞く「飛躍のアルゴリズム」。2つ目のキーワードは「人間の4000倍のスピードで、弁護士の作業をサポートし、コストが70%減。人工知能が支える企業訴訟」。人工知能が活躍する現場に迫る。
■まずは“仕分け”で活躍する
――先ほど社長がおっしゃったそのアメリカでの特殊な訴訟制度というものが「ディスカバリー」という名前だとうかがいました。被告と原告双方の企業が、自ら証拠を開示するという制度のことだそうですね。そのために企業は社内にあるたくさんの資料の中から証拠になる資料だけを選び出すという作業をしなければならないと聞きました。これがかなり膨大な作業量になるんですよね。
巨大なグローバル企業だと訴訟を受けた場合に、場合によってはその訴訟の関連者が100人になることもあります。その100人が持っているデータを調べなければいけないので、その人の持っているパソコン―それが100台あると。その1台のパソコンのデータを、印刷して紙にすると、だいたいトラック10台分ぐらいになります。100人だと1000台になる。さらにサーバーのデータともなると膨大になる。それを仕分けていくところで、我々の技術、人工知能が活用されています。
――これだけの量を仕分けするのに、どうやるんですか。
最初はですね、まず関連するキーワードや時間を絞り込んでいきます。最大で1/3くらいにまでしてくれますが、だいたい1/2くらいになります。それから、実は通常のIT技術には限界があって、結局、人に頼らざるを得ない。弁護士などが、目で見ることになるんですね。例えば50人の弁護士で数か月、場合によっては300人ぐらいの弁護士さんで1~2年かかる。非常に多くのデータを見なきゃいけないということになります。
■スピードは人間の4000倍
――言語の問題もありますよね。
そうですね。特に日本の企業は当然ですけども、日本語のデータを持っていますから、アメリカで日本語のデータを読める弁護士がどれだけいるかと。かなり苦戦しますし、時間はかかるし、結局、翻訳しなければならない。これが結果、日本の企業では苦戦しているんです。それを支援しようと思って、我々は技術を開発しまして、日本語、中国語、韓国語、もちろん英語もですけども、解析できる人工知能を活用して、それを支援している状況です。
――それを使用することで、どのくらい成果が上がったんでしょうか。
通常、人が見るよりですね、速度としては4000倍です。クオリティー的にも、人間は疲れてしまうので当然精度も落ちますが、人工知能は落ちないと。結果的に精度も上がって、コストも、40%から最大70%くらいまで下がります。