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ヤフー安宅氏 無駄な努力をしない社会に3

2017年1月20日 13:16
ヤフー安宅氏 無駄な努力をしない社会に3

 ヤフー・チーフストラテジーオフィサーの安宅和人氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。3つ目のキーワードは「今は第二の幕末、戦後。若い力を解き放て」。世界との“データの戦い”において、日本は勝負になっていないと語る安宅氏。その解決のカギを握るのは?


■勝つためのファクター

 今のAI(=人工知能)とかデータの戦いで勝っていこうと思うと、3つの大きなファクター、要素があるんですけど、いろんなデータを集めてきて、それでいろんなことに使えるようにするということが1つですね。2つ目はそれをガンガンと回して何か処理する。それを回すだけの技術があるということです。3つ目はそれをやる人がいるということです。

 まず、データということに関して言うと、この国は勝負になってないです。あらゆる用途がもう検索であろうとコマースであろうとSNSであろうと、桁違いにこの国はデータがないです。ペイメントデータであろうが何だろうが足りてないです。

 それと、データの処理力ということに関して言うと、特にデータセンターとかで回そうと思うと、ものすごくばく大な電気代がいるんですが、大体アメリカと比べても5倍、10倍と日本の場合かかります。中国やロシアと比べても、たぶん数十倍の差があってデータ処理コストが高すぎるんですね。

 技術についても、ビッグデータ系の技術が、ほとんど今は英米およびイスラエル、あと中国に集中していて、日本にはないんです。そこまで技術もなくてデータ処理も金がかかると。

 それと、エンジニアっていうのもかなりいます。しかし、いわゆるシステムインテグレーター型の昔の巨大なシステムをつくるエンジニアは相当量いらっしゃるんですけれども、ビッグデータ系のエンジニアが足りない。

 それと、トップレベルの情報科学者はいるんですけど、薄いんですよ。メガ教育をしているような国がいくつもあるんで、そういうのに比べると薄い。データは無い、処理はできない、人もいない…ということで三位一体的に“爆死”です。


■“黒船”の衝撃、再び…

 160数年前、大きい船がいっぱいやってきた時代があったんですけれども、その時に、当時のお役人の方々があ然と立っているという…あの時に近いという感じで、半ば黒船がやってきた時に近いぐらい、完全敗北をしたと思います。

 世界マーケットキャップと言われている事業の時価総額ランキングを見ても、一番上の5社は全部ICT系の企業なんですね。アルファベット(グーグル)があって、アップルがあって、マイクロソフトがあって、フェイスブックがあって、そしてアマゾンがいて5社なんですけど、そこに日本企業はもちろんいないですし、日本のトップであるトヨタでも、今31位という驚くべき状態で、日本のトップ企業が30位外なのは本当に久しぶりなんですよ。何十年ぶりくらいの状態なんですね。そのぐらいやばい状態です。


■20代が時代を変える

――つまり、日本はルールが変わってしまったのに、そのルールに気がつかなかったということなんですか。仕事のやり方も、そもそも何が必要なのかに関しても、見誤ってしまったということなんですね。ここから先、私たちはどうすればいいんでしょうか。やっぱり若い人ですか。

 やっぱり若い人ですね。似たような状態をこの国は少なくとも2度体験しています。本当は鑑真和上を連れてきた時を考えると3回あるんですけど。

 いわゆる“維新”の時、日本は完全に何もやってなくて、産業革命って150年くらい、100年以上続いていて、その間中、我々の先祖たちはちょんまげを結ってチャンバラとかやってたわけですね。限りなく関係がない事をやっていて、産業革命に“無参加”だった。突然、参加して30~40年で追いついて戦争をへて、“ぶっちぎった”という過去があります。

 この時もそうでしたし、前の戦争があった時もそうですけど、結局、こういう変化を起こした人は常に10代と20代なんですよ。それはそうなんです。だからやっぱり今回もそうだと思うんですね。

 いわゆるオールドエコノミーと呼ばれているような、“モノ金系”のタイプの産業ではないタイプの、データ機械型の産業にいま一気にかわっていこうとしている。全ての産業はそっちに向かっているわけですよね。

 引き上げていく人は、やっぱり20代を中心とした若者であることはほぼ確実だと思います。このぐらい激変している時に対応する人はそっちだろうと。我々みたいな中年以上の方々は、そういう若い人を励まし、支援していい人紹介し、できたら金も出すと。そのくらい三位、四位一体的にサポートするのが大事かなと。

――今こそ若い人たちの出番ということですね。これだけ社会が大きく変化しているので、ちゃんとそれを見極めようということですね。

 そうですね。“邪魔なおじさん”にならない。それは自分に言い聞かせてるんですけど、大事かなと思っています。