5兆円超の投資は何のため イーロン・マスク氏のツイッター社買収提案
電気自動車大手テスラのイーロン・マスクCEOがツイッター社を買収すると提案しました。なぜ、マスク氏は5兆円以上をつぎ込んで、ツイッターを買収するのでしょうか。
■「ツイッターを言論の自由のプラットホームに」
ツイッター社は、マスク氏から全ての株式を取得したいという提案を受けたと発表しました。
マスク氏はツイッター社に送った書簡の中で、「ツイッターが世界の言論の自由のためのプラットホームになる可能性を信じ、ツイッターに投資した」とした上で、「ツイッターには驚くほどの可能性があり、私はそれを解き放つ」と述べています。
■5兆円を超える投資は何のため
マスク氏は、1株あたり54ドル20セントで株式を取得すると提案しています。
すでに所有している株式も含めた全ての発行済みの株式数約8億株から計算すると、総額で433億ドル、日本円で約5兆4000億円にのぼります。(1ドル=126円で計算)
マスク氏が投資を発表する直前の4月1日の時点のツイッターの株価の終値は、39ドル31セントでした。
今回の買収提案について、メディアや社会学を研究する東京工業大学リベラルアーツ研究教育院の西田亮介准教授は、「マスク氏は、マネタイズ(収益化)がうまくいってないとの認識で、ヘビーユーザーの1人として経営陣を刷新するなどしててこ入れしたいのではないか」と分析します。
ツイッター社は日本での売り上げこそ昨年10月からの3か月間で、前の年に比べて1割増えていますが、同じ期間の1日あたりの利用者数でみると、アメリカでは、3パーセントの伸びにとどまっています。
西田氏によれば、世界では利用者数の伸びも頭打ち感が強く、有料課金のあり方などで二転三転するなど、収益化もうまくいっていない状態だとして、マスク氏は、株式を非公開化して目先の利益の要求に振り回されず、ツイッターを改革したいと考えているのではないかということです。
■俺がやらなきゃ誰がやる
なぜマスク氏自身がてこ入れに乗り出すのか。西田氏はアメリカのトランプ前大統領を例えにあげました。
「マスク氏は英語圏のユーザーの中では、ツイッターを熱心に使い世界中で物議を醸す存在。まるでトランプ大統領のようだ」だと指摘します。
その上で「ツイッターの恩恵、影響力を最もうまく使っているグローバルなビジネスリーダーの1人として自らてこ入れしようという思惑があるのでは」と分析します。
マスク氏は、創業者のジャック・ドーシー氏が導入を拒否していた「編集ボタン」を導入したい強い思いを持っています。
現在は、一度投稿した内容の一部分を修正することはできません。間違った投稿は削除して新たに投稿する仕組みになっています。
その理由のひとつに、ある投稿が拡散された後に、その内容を修正できると、内容に同意して拡散した人の意図とは異なってしまう恐れがあるからです。
マスク氏は、ツイッター上で「編集ボタンが必要かどうか」のアンケートを取った結果、必要が多数だから導入すべきだと主張します。
他にも、マスク氏は今の運営側が特定内容の投稿を削除したり、アカウントを永久に削除することに対しては消極的な姿勢を見せています。
ツイッター社はマスク氏の買収の提案に対し、「取締役会は提案を慎重に検討し、当社および全ての株主の最善の利益になると考えられる行動方針を決定します」とコメントしています。