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食べ物が結びつけた働く女性たちの熱意

2022年3月5日 9:29
食べ物が結びつけた働く女性たちの熱意
管理職の女性割合が1割にも満たない日本のビジネス界。そのなかで、女性たちが団結し、新しいプロジェクトをはじめました。

国際女性デーにホテルでご褒美スイーツを

3月3日、静岡県三島市にある富士山三島東急ホテルのレストランで、新しいケーキとドリンクの提供がはじまりました。

ドーナツ型のスポンジケーキを縦に2つ並べた「ベリーとマカロンのご褒美ケーキ」の形は、数字の「8」をモチーフにしたもの。女性をたたえる日として国連が定めた「国際女性デー」である、3月8日を記念したデザインです。

普段、自分のために買う機会は少ないマカロンを贅沢にトッピングしたのが、頑張っている女性たちへのご褒美ケーキとしてのこだわりだといいます。

「国際女性デー」にちなんだ工夫はドリンクにも。レモン果汁を垂らすと青からピンクに変化する「3Cパワーのレモネード」。色の変化は、自信を持った女性たちの意識や行動の変化を現しています。

「国際女性デー」を記念して、3月31日まで提供されるこのケーキやドリンク。実は、東急ホテルが初めて“すべて女性社員だけ”で企画したメニューなのです。

■社員の半数が女性 でも女性管理職はゼロ…

2020年6月にオープンした富士山三島東急ホテル。社員の50%が女性で、ホテル業界ではかなり女性比率が高い方だといいます。販売促進部で働く広瀬美紀さんは、もっと女性が活躍できる職場にしたいと考えていました。

オープンして間もない富士山三島東急ホテルでは、女性社員の多くが新入社員や中途採用の社員。年次があがるほど女性社員は減り、管理職は全員男性です。そのため、社員の半数を占める女性たちが経験できる業務は限られています。

アイデアを自分の力で実現することが仕事の楽しさだと考えていた広瀬さん。「国際女性デー」に向けて期間限定メニューを開発するプロジェクトを支配人に提案すると、返ってきたのは「それであれば、すべて女性だけでやってみてはいいんじゃないか」という返事でした。

こうして今年1月、社内の各部門からリーダーシップのある女性が集まり、特別チームが発足したのです。

■「チャンスが訪れたら変化を恐れずチャレンジ!」と思いを込めたレモネード

ドリンクの開発を担当した菊田恵未さんは、普段はレストランで接客を担当しています。ホテル業界の経験は20年近いですが、自分の接客はまだまだなのではと不安を抱いていました。

しかし、プロジェクトの会議を重ねるうちに、自分の意見や得意不得意を受け止めてくれる仲間の存在に気づき、「この職場でもっとたくさんのお客さまを幸せにしたい」と考えるようになったといいます。

そして完成した「3Cパワーのレモネード」。3Cにこめたメッセージは、「Change=変化」「Challenge=挑戦」「Chance=好機」。菊田さん自身が勇気を持ってプロジェクトに参加し、変化したように、不安を抱えているたくさんの女性に勇気を出してもらいたいという思いで、ドリンクを提供します。

■子育て家庭の食事で時短より大事なこと

女性リーダーの活躍はほかにも。

居酒屋チェーン、ワタミが2月1日にリリースした、子育て家庭向けミールキットの新ブランド「PAKUMOGU」。親子2~3人前の夕食が15分で作れる、食材や調味料のセットを宅配するサービスです。

ワタミの将来を担う柱として力を入れているこの事業も、女性社員を中心とするチームで開発されたものです。

リーダーの芦野恵理子さんは、3歳になる男の子を育てながら感じていた思いを商品開発に生かしました。仕事で忙しい毎日で、家事の負担をなるべく減らしたいけれど、バランスのとれた食事を食べさせたい。そしてなにより、子どもが「おいしい!」と言って食べてくれるものを作りたいという思いです。

そのため、実際に親子を集めて試食してもらいながら、およそ60のメニューを開発しました。自信を持って出したメニューが「野菜を見ただけで嫌」と酷評されたこともありましたが、野菜で肉を巻いていつもと違う演出を加えると「苦手な野菜が食べられた!」と高評価を受けました。「箸やスプーンを使って食べるいつもの食事と違って、手づかみで食べられることが楽しさにつながった」と芦野さんは分析します。

■全国の女性たちと一緒に成長するPAKUMOGU

芦野さんがPAKUMOGUにかける思いは、女性社員たちに広がりをみせています。

全国におよそ500あるPAKUMOGUの営業拠点。そこではおよそ300人の女性が働いていて、販売促進や新メニューのアイデアが芦野さん宛てに届いているというのです。現在までにおよそ2万食利用されているPAKUMOGU。新学期に向けたお祝いメニューの準備を進めている芦野さんは、「出だしは好調。ますます認知とお客さまを増やしていければ」と意気込みます。

女性リーダーの挑戦をサポートすることは、企業の成長につながっています。