「価格の優等生」もやし値上がり 生産現場で起きていること 小売りでも苦悩が
相次ぐ値上げラッシュが「価格の優等生」もやしにも波及しています。日本で輸入する緑豆の9割は中国産で、生産者減少を受けて相場が上昇したことが背景とみられます。こうした中、生産現場では何が起きているのでしょうか。栃木県の工場を取材しました。
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東京・港区にある興祥園の厨房では、たっぷりのもやしを入れ、しょうゆなどと炒めた餡をラーメンの上に乗せていました。完成したのは、シャキシャキとした食感が売りの、もやしラーメンです。さらに、ランチで人気のレバニラ炒めも、もやしを大量に使って調理していました。
他の食材より安く仕入れられることもあり、中華料理には欠かせない、もやし。この店では、1日で使う量は「5kg」と話します。
しかし今、「価格の優等生」であるはずのもやしが、値上がりしているのです。
興祥園 叶暁東店長
「(仕入れ値が)5%くらいしか上がっていない状態なんですけど、結構、周りで『上がっている。上がっている』って…。ちょっと不安な気持ちもありますね」
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生産現場では、何が起きているのでしょうか。1日約50万パックを製造する、栃木県の富士食品工業・日光工場を取材しました。
水分を与えられ、すくすくと育つもやし。約1週間後には出荷できるサイズに成長します。富士食品工業では、このもやしの種である「緑豆」の高騰に頭を抱えているということです。
富士食品工業日光工場 福田巧副工場長
「昨年比で3~4割、(緑豆が)値上がりしている状況。非常に大変な苦労をしています」
工業組合もやし生産者協会によると、日本で輸入する緑豆の約9割が中国産です。しかし、その中国では緑豆を栽培しても高く売れないため、生産者が減少するなどして、相場が上昇しているということです。
この工場では、既にスーパーなどの小売店に対して1割ほどの値上げを要望しました。さらに――
福田巧副工場長
「ガス燃料等も価格が上がってきているので、さらに1割ほどの価格改定をお願いしなければいけない状況」
総務省が2月に発表した小売物価統計調査によると、東京都区部の一般的なもやし1袋の平均価格は32.6円でした。しかし、もやし生産者協会は「40円程度が適正価格」と訴えています。
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21日、東京の新宿八百屋では、もやしが1袋27円で販売されていました。この店では、1年を通して20円台後半で販売しています。仕入れ値は2021年に比べ、5キロで10円上がりましたが、特売価格を続けているのには、ある理由がありました。
新宿八百屋 広報 廣田廣史さん
「他のお店よりも安く出して、お客さんに来てもらう。ギリギリまでずっと、この価格でやらせていただきたい」
新宿八百屋では、集客のため現状、値上げはしないということですが、今後、高値が続けば、店頭価格の値上げも検討せざるを得ないと説明しました。
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緑豆が原料の春雨も、値上げの波に見舞われています。
丸松物産貿易部 福井康臣係長
「春雨製品の製造コストもアップしております」
丸松物産では、今年2月から緑豆の仕入れ値が2割ほど上昇したため、6月に業務用の春雨の販売価格を値上げする予定だということです。
福井康臣係長
「企業努力で(仕入れの)値上げ分を吸収してきたのですけども、本当に厳しい状態です」
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値上げラッシュは、広がり続けています。