女性の扱い“最低” 日本の上場企業がジェンダー平等で最下位に
アジア太平洋地域の上場企業を対象とした「ジェンダー平等推進度」の評価で、日本が最下位に。日本企業が抱える課題を取材しました。
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■世界でも、アジアでも遅れている日本企業のジェンダー平等
国際的な調査研究などを行う笹川平和財団と、オランダの調査機関のエクイリープが、日本、オーストラリア、シンガポール、ニュージーランド、香港の上場企業を対象に「ジェンダー平等推進度」を評価し、16日に結果を発表しました。
調査は1181の上場企業が公開している情報から、従業員のジェンダーバランスや、報酬の平等性など19項目を分析しました。
ジェンダー平等推進度を国と地域ごとに平均すると、1位・オーストラリア46%、2位・シンガポール、ニュージーランド40%、4位・香港30%、5位・日本28%となり、日本は最下位でした。
また、5つの国と地域の平均は33%で、世界各地の同規模の経済圏の平均である37%を下回りました。
世界と比べてジェンダー平等の推進が遅れているアジア太平洋地域。その中でも、日本が最低となった形です。
■日本の上場企業の課題は「ジェンダーバランス」と「賃金格差」
日本企業のスコアを下げた要因は大きく2つあります。1つ目は、ジェンダーバランスの偏りです。取締役、役員、管理職、労働者の4つの階層に分けて企業の女性比率を集計した結果、日本は全ての階層において5か国・地域中最低水準となりました。全ての階級で女性比率が30%に満たなかったのは、同じ経済規模である世界中の他の国々と比べても日本だけでした。
女性比率が最も高かった階層は労働者で28%、最も低かった階層は役員でわずか4%となり、1位のシンガポール、ニュージーランドの7分の1にとどまりました。
リーダーシップ層の女性比率の低さはとりわけ深刻で、CEO(最高経営責任者)が女性の企業は1位のシンガポールで14%だったのに対し、最下位の日本では1%にも届きませんでした。
2つ目は、賃金格差です。男女の賃金格差のデータを公表している企業の割合は、1位・オーストラリア23%、2位・シンガポール22%、3位・ニュージーランド16%、4位・香港6%、5位・日本4%となり、日本企業は情報開示が遅れていることがわかりました。
男女の賃金格差を是正するポリシーを公表している日本企業はわずか3社で、そのうち男女の賃金格差の「データ」と「是正ポリシー」の両方を示しているのはソフトバンクのみでした。
■世界に誇れる日本の法律「男性育休」
日本企業のジェンダー平等は全く進んでいないのでしょうか?
2019年に日本、香港、シンガポールの大手上場企業100社を対象として同様の調査が行われていました。その時の調査と比べて、今回大きくスコアを伸ばした項目があります。それは、セクシュアルハラスメント防止対策です。
セクハラ防止ポリシーを公表している企業の割合は、2019年には29%でしたが、今回は52%と大きくスコアを上げ、5か国・地域の中で最高となりました。
笹川平和財団の担当者は、2020年に通称“パワハラ防止法”が施行され、その中でセクハラについても企業に対策の強化が義務づけられた影響とみていて、「制度ができたことが大きな変化となって数字に表れている」と分析します。
また、日本の育児休暇制度はアジア太平洋地域で最も寛大だと高い評価を受けています。特に男性育休の法整備があることは画期的で、調査の担当者は「ジェンダー部門では日本が唯一誇れる法律です」と話しました。
しかし、法整備は立派でも実際の男性の育休取得率は12.5%と低いことが内閣府の最新の調査でわかっており、企業には積極的な育休取得を促す取り組みが求められます。
■ジェンダー平等を進めないと世界経済から取り残される?
今回の調査の目的は、ジェンダー平等推進度の評価をESG投資に活用することです。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)のこと。これらに配慮している企業に投資することで、社会課題の解決を目指す動きが世界的に強まっているのです。
人も、お金も、ジェンダー平等に取り組む企業に集まる時代が近づいています。世界のトップ企業から取り残されないよう、日本の上場企業には思い切ったジェンダー平等推進策が求められます。