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カーボンニュートラルの切り札!?洋上風力

2021年1月1日 20:17
カーボンニュートラルの切り札!?洋上風力

「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」菅首相が所信表明演説で掲げた“温室効果ガスの排出、実質ゼロ”。その目標に向けた実行計画、「グリーン成長戦略」が12月25日に公表された。この戦略により、2050年に見込まれる経済効果は年間190兆円程度。あらゆる政策を総動員してできるかどうかの高い目標を、国として掲げた。

◆脱炭素社会 実行計画

「グリーン成長戦略」では、成長が期待される14の重点項目を掲げ、具体的な目標や行程を示した。自動車分野では、自動車の電動化を進め、遅くとも2030年代半ばまでに、すべての乗用車の新車販売を電動車とする。エネルギー分野では、再生可能エネルギーについて「最大限の導入」を図ると明記。脱炭素化の「キーテクノロジー」とされる水素は、2050年に2000万トン程度導入する。発電コストもガス火力以下にする目標だ。そして、再生可能エネルギーの中でも政府が「切り札」と位置づけているのが、洋上風力発電だ。

◆政府の「切り札」 洋上風力

海上に作った風車で発電する洋上風力発電について、政府は秋田県能代市沖や千葉県銚子市沖などで11月に事業者の公募を開始した。2040年までにはその発電能力を大幅に拡大し、3000万~4500万キロワットの導入を目指す。これは100万キロワット級の大型火力発電所に置き換えると、30~45基分に相当する。実証段階の今、洋上風力による発電量はわずか1.4万キロワット。政府関係者は「かなり意欲的な目標だ」と話す。

◆なぜ洋上風力か?

太陽光、水力、地熱・・・数ある再生可能エネルギーの中で、洋上風力に力を入れる理由は何か。政府は、3つの理由を挙げる。

1つ目は、洋上風力が「大量導入が可能」だと見込まれることだ。国土が狭く、発電のための広い敷地を確保することが難しい日本だが、海上に風車を作る洋上風力なら四方を海に囲まれているアドバンテージがある。日本同様に島国であるイギリスでも、すでに政府と産業界が手を組み、2030年までに大量導入を目指すことで合意している。

2つ目は、「コストを下げることが可能」とされること。高いコストが課題の洋上風力発電だが、政府は風車を大型化し、電気を量産することで、コスト低減が狙えるとしている。実際に、先行しているヨーロッパでは、コストの低減に成功していて、火力発電よりも安い値段で取引されている事例もある。

3つ目は「経済への波及効果」だ。洋上風力は構成部品が多く、1プロジェクトあたりの事業の規模は数千億円にも上ると試算されている。今、日本にある洋上風力の設備は輸入に頼っているが、これを国産とすることで、国内の製造業の新たな収益をねらう。政府は2040年までには、部品などの6割を国内で調達するという目標も掲げている。将来的には、同じく洋上風力に力を入れるアジアへの輸出などを目指し、新たに産業として育てていく考えだ。

◆洋上風力のさらなるポテンシャル

高い目標を示した政府。しかし、再生可能エネルギーに関する政策提言などを行うシンクタンク『自然エネルギー財団』は、「洋上風力には715ギガワット(=7億1500万キロワット)のポテンシャルがある」としている。これは単純計算で、2050年時点での政府目標の15倍以上にあたる。

財団の工藤美香上級研究員は、ポテンシャルを最大限に活用するカギの1つは、「送電網を拡充させること」だと話す。遠く離れた海上で発電した電力を、東京や関西など電力需要がある市街地に、直接運ぶ必要があるが、実現するためには、海底に敷く新たな送電網が不可欠だ。

また、今の仕組みでは洋上風力の事業者側の負担が大きいため、国のサポート制度を充実させることも重要だという。例えば、環境への影響を調査する環境アセスメントは、事業者側が各自で行うことになっている。しかし、複数の事業者が同じ区域で似た調査を複数回行っていることも多く、手間やコストが重複している。国主導でデータ収集を一元化し、無駄を避けるべきだ。

◆未来の“当たり前”に…?

日本ならではの課題もある。台風や地震が多い日本で海上に風車を作るには、より頑丈な設備が求められる。海上に発電所を作る際、漁業権をもつ関係者から、反対の声も予想される。

こうした課題を乗り越えるには、「洋上風力が必要」という日本全体での共通認識も必要となってくるだろう。海上に風車が並ぶ風景が日本の“当たり前”となるのかどうか、2021年は重要な年となりそうだ。

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