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経済
2021年1月3日 20:06

コロナ禍に変革を迫られる大手銀行

コロナ禍に変革を迫られる大手銀行
(c)NNN

「安定」、「お堅い」のイメージがいまだ根強い大手銀行。しかし、コロナ禍の中、銀行業界に大変革の波が押し寄せている。メガバンクを傘下に持つ大手金融グループ3社の2020年4月から9月までの中間決算では、最終的な利益が3グループそろって減少した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で経営が悪化した融資先企業の貸し倒れに備えた費用が膨らんでいるためだ。

少子高齢化といった日本社会の構造的問題に加え、長引く超低金利の影響で経営が厳しいメガバンクや地方銀行に新型コロナウイルスが追い打ちをかけた形だ。

銀行は、貸出金利と調達金利の差である「利ざや」で利益を得るのが基本的なビジネスモデルであったが、日銀のマイナス金利政策などによる長引く超低金利で、この「利ざや」が縮小。しかも、新型コロナ対策の大規模金融緩和策の継続で貸出金利はしばらく上がる見込みがなく、個人向け業務の柱だった住宅ローンでさえ、もはや儲からない。あるメガバンクの中堅社員はこう話す。「“お金を預かって貸す”という企業と個人の資金繰りを支えるという銀行の使命は不変だ。しかし、昔のエースは預金を集める人だったが、これからは新しいビジネスを作り出す人がエースになる」。

銀行は、預貸金業務中心の収益モデルから脱却し、新たなビジネスモデルの確立が急務となっている。さらに、コロナ禍で突然、“密”や人との接触を避けることが求められるようになり、その解決策としてデジタル化が急速に進み、銀行の店舗営業そのものにも改革の波が押し寄せた。

■メガバンクで進む店舗改革

2020年、大手銀行は新しいスタイルの店舗営業やこれまでになかったサービスを相次いで始めた。

みずほ銀行は、川崎市に従来のいわゆる“窓口カウンター”がない店舗をオープンさせた。店内の広い顧客スペースの一角にあるスタンディング式のテーブルに置かれているのは、タブレット端末。銀行口座の開設や、税金の支払い手続きなどを顧客自身がタブレット端末を使って1人で行えるようになっているのだ。こうすることで行員の事務作業が減り、業務の効率化を図ることができる。行員の余ったリソースは、資産運用などのコンサルティング業務に振り向けるという。

さらに別の効果もあった。来店客の待ち時間が従来の半分程度になり、店舗内の混雑が解消され、コロナ対策にもつなげることができたという。

一方、三井住友銀行は、窓口で行員による現金の受け渡しをしない店舗を神奈川県に開設した。店舗には900枚の紙幣を一度で扱える「高機能ATM」を導入し、行員は原則、現金を扱わないという。この店舗の面積は通常の半分ほど。少人数、省スペースで業務の効率化も図る。

三井住友銀行は、こうした「軽量店舗」を今後、約300店に増やす方針で、三井住友銀行でも効率化で余った人的リソースを顧客のコンサルティング業務に投入する考えだ。

店舗の外に力を入れる銀行も現れた。三菱UFJ銀行では、2020年12月からすべての店舗で来店の事前予約を受け付けるようにした上で、インターネットバンキングのサービスを拡充するとしている。ある大手銀行関係者は、「これまでの店舗は事務処理の場だったが、デジタル化で必要がなくなっている。ATMすらコロナであまり行かない、店舗そのものの存在意義が否定されているようだ」と話す。

■IT企業との連携相次ぐメガバンク

次世代金融に向けてメガバンクは、IT企業との提携にも積極的だ。2020年6月、みずほフィナンシャルグループとソフトバンクは、スマートフォンを使う次世代型の金融サービスで包括提携した。スマホ上で株式売買や投資信託の購入ができるサービスを提供するほか、AI(=人工知能)による「信用スコア」をもとにした個人向け融資も始めた。

こうしたスマホ金融をめぐっては、三井住友フィナンシャルグループと、インターネット金融大手のSBIホールディングスも包括提携したほか、三菱UFJフィナンシャル・グループは、銀行やネット証券の分野でKDDIと連携している。いずれもデジタル戦略を進めることで、20~30代の顧客の取り込みを狙っている。

■“脱炭素”やESG投融資が加速する2021年

「低金利」、「コロナ禍」以外にも、金融業界に変革を迫っている要素がある。それは「SDGs(持続可能な開発目標)」と、環境や社会・企業統治への配慮を重視した「ESG投融資」だ。SDGsで掲げる目標のひとつである脱炭素社会の実現に向け世界の動きが加速する中、温室効果ガスの削減に向けて、二酸化炭素の排出量が多い石炭火力発電所への投資や融資などを原則とりやめる動きが、国内の金融業界でも顕著になった。

2020年4月、三井住友フィナンシャルグループとみずほフィナンシャルグループは、新設の石炭火力発電には投融資しないと表明した。すでに「新設の石炭火力への融資は原則として実行しない」との方針を表明していた三菱UFJフィナンシャル・グループはさらに、2020年10月、温室効果ガスの排出量が大きい石炭火力発電所向けの融資残高を、2040年度をめどにゼロにする目標を発表。国内最大級の機関投資家である大手生命保険各社も、資産運用で、「ESG投資」を強化する方針を相次いで打ち出した。

日本生命は2021年4月から、全資産約70兆円の運用にESGの考え方を採用すると発表。第一生命保険も2023年度までに全資産36兆円にESGの考え方を取り入れるとした。

そんな中、菅首相は、就任後の所信表明演説で、国内の温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す方針を表明した。ある銀行の企業営業担当の責任者はこう話す。「顧客との話題は、これまでDX(デジタルトランスフォーメーション)だったが、今はSDGs、ESGの話、一辺倒だ。総理の“カーボンニュートラル”発言で、ますます企業はSDGs、ESGへの意識が高まるだろう」

新型コロナウイルスによる危機が2年目に入る中、2021年の金融業界は、店舗改革、デジタル化、そしてSDGsやESG投融資をキーワードとした新たなビジネスモデルの模索が加速する。