障害者の悩み解決 顔が見えるマスク
長引くコロナ禍で、コミュニケーションに不便を感じる障害者を支えるため、新たな製品やサービスが生まれています。
■80%顔が見える 曇り止め加工も
ヘルスケア製品大手のユニ・チャームが、口元や表情が見えるマスクを発売しました。このマスクは、中央部分に曇り止めの加工を施した透明フィルムが使われているため、着用しても顔の80%が見えます。飛まつの漏れを防ぐため、フィルムの周りの布部分が顔にフィットするよう、設計を工夫したということです。
■切実な声 実体験から生まれたマスク
開発のきっかけは、ユニ・チャームで働く聴覚や言語に障害のある社員の実体験。
新型コロナウイルスの感染が拡大してマスクをすることが習慣化して以降、この社員は、口元が見えるマスクを自作して会議の参加者に配っていました。通常のマスクでは、話している人の口元や表情を読み取ることができず、コミュニケーションに不便を感じていたからだといいます。しかし、自作のマスクでは飛まつの閉じ込めに不安が。また、中が曇って結局、口元が見えなくなってしまうなどの問題がありました。
この切実な声を受けユニ・チャームでは、メーカーとしての強みだった立体マスクなどの製造技術を生かし、このマスクを開発したということです。
「顔がみえマスク」は1枚1480円(税込み)。
オンラインショップで予約販売を始めたところ、その日のうちに初回分の3000枚が売り切れました。コミュニケーションの中で表情を見せることが相手の安心につながるとして、教育や介護の現場などで使いたいというニーズも多かったということです。ユニ・チャームでは、次回の販売も調整中だとしています。
■コロナ禍で広がる 障害者を支える取り組み
コロナがきっかけで始まった障害者に向けたサービスは他にもあります。
「デジタル障害者手帳」といったアプリ開発などを手がける「ミライロ」が去年4月に始めたのは、「遠隔手話通訳サービス」です。これは、聴覚や言語に障害がある人がオンライン会議を行うときにサポートするサービス。依頼を受けたオンライン会議にスタッフが参加して、手話を代行したり、チャットに文字を打ったりして同時通訳を行います。
開始から1年で、120回ほど利用があったというこのサービス。最近は、採用面接や新入社員の研修などに導入する企業も増えてきているということです。
ミライロの担当者は「障害のある人が情報を入手するために必要なサポートを行うことは、企業や大学などでも当たり前になってきている」と話しています。