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経済回復へワクチン接種急げ 2つの失策

2021年5月22日 18:27
経済回復へワクチン接種急げ 2つの失策

■経済回復に明暗

今年1~3月期のGDP(=国内総生産)は新型コロナの影響でマイナス成長に転落した。マイナス1.3%、年率にして5.1%の急減速。戦後最悪のマイナスとなった昨年4~6月期以来で、日本経済はますます厳しさを増している。今年4~6月期もこのままマイナス成長が続くとの見方が強い。

一方、海外に目を移すと、アメリカではワクチン接種や巨額の財政出動で経済活動の再開が進み、1~3月期は年率6.4%増だ。

すでに回復局面にある米中とは明暗が分かれた。その理由は、感染収束に不可欠なワクチン接種の遅れにあると専門家は見る。

■ワクチン接種の遅れ、ナゼ?

実際、OECD(=経済協力開発機構)に加盟する37か国のなかで、日本の接種率は最低水準。菅総理大臣は7月末までに高齢者の接種を終わらせたいとしているが、予約などの手続きで混乱が続き厳しい情勢だ。

その理由として、ピクテ投信シニアフェローの市川眞一さんは次の2点を挙げる。

「日本は人口1000人あたりの病床数はOECD加盟国で1番多く、新型コロナ感染者は欧米に比べ極めて少ないのに、コロナ病床や治療にあたる医療人材が不足している。つまり、日本の医療制度には構造的な問題があるのだろう。地域の医療機関に医療資源の配分が偏り、大規模な基幹病院が恒常的な人材不足に陥っている」

「もう1つは、ワクチン接種に向け、前もってしっかりした接種計画を立てなかったことだ。昨秋の段階でワクチンの開発状況は概ね見えていた。そこから先を読んで、マイナンバーを活用したシステムを構築し、大規模接種会場でも地域の診療機関でも一元的なデータ管理ができるようにしておくべきだった」

■非正規にしわ寄せ、今 必要なこと

長引くコロナ禍で飲食や観光などの事業者は大きな打撃を受けている。非正規労働者を中心にしわ寄せが出ており、雇用の先行きも心配だ。コロナ禍からの回復が見込めれば、これまで我慢してきた分の潜在的な消費意欲が喚起される可能性もある。

政府高官は「GDP回復の鍵となる個人消費を活性化するには、ワクチン接種は欠かせないが、接種効果が出てきても、感染者はなくならない。新たな変異株もどんどん出てくるから、ワクチンに頼るだけではなく、効果的な対策を要所要所にうつことと、医療のひっ迫を防ぐための医療体制の拡充が重要だ」と話す。

今、この機会に、医療資源の偏在を是正することも欠かせないが、なんといっても経済回復への早道はワクチン接種率の向上だ。接種が遅れればそれだけ経済へのダメージは深刻になる。政府にはあらゆる手段を講じてワクチン接種を加速してもらいたい。