【解説】中小企業に「賃上げ」広がるか? カギは「価格転嫁」
春闘・集中回答日の13日、大手企業では大幅な賃上げが相次ぎました。この賃上げの勢いは日本全体に広がっていくのか、経済部・企業担当の城間将太さんが解説します。
藤井貴彦キャスター
「大手企業は満額回答が続出という結果ですが、この賃上げの勢いが日本全体に広がっていくんでしょうか」
城間将太 経済部・企業担当
「まさに日本全体に賃上げが広がるのかどうかは、日本の働き手の7割が勤める中小企業がどれぐらい賃上げできるのかにかかっています。そのカギとなるのが『価格転嫁』です。『価格転嫁』とは、取引の価格に原材料費や物流費、そして自社の従業員の人件費などの増加分を上乗せすることです。これができなければ中小企業の賃上げは思うように進みません。今回、日本テレビは、2022年に公正取引委員会から『積極的に取引価格を下請け企業と協議する場を設けていなかった』と指摘を受けた13社に、その後、どのように取り組んだかについて独自に調査して、9社から回答を得ることができました」
藤井キャスター
「実際には取り組みは進んでいたんでしょうか?」
城間企業担当
「具体例、主なものをまとめました。自動車部品メーカーのデンソーやマンション管理を行う東急コミュニティーでは、取引先との価格協議を進めるための専門部署を設置したということです。また、三菱食品では、全ての社員に対しインターネットでの研修を実施して、価格転嫁の重要性を社内に浸透させたということです」
藤井キャスター
「改善策は出したとしても、それが実際に価格交渉に進んだかどうか。この点はどうでしょうか?」
城間企業担当
「まず価格協議を行ったかどうか、これについては調査を行って回答があった9社全てが『行った』としています。ただ、取引価格の引き上げについては、『価格交渉を行った取引先全ての企業に対して取引価格を引き上げた』と回答したのは5社と、約半数という結果になりました。価格交渉を行ったからといって、必ずしも取引価格の引き上げにつながらなかったというケースもあります」
藤井キャスター
「交渉したものの引き上げとならなかった理由というのはわかっているんでしょうか?」
城間企業担当
「それについては、『大企業にも取引先の企業や販売相手となる消費者はいるので、取引先の企業や消費者から実際に取引価格の引き上げを行ってもらわなければ、下請け企業への取引価格の引き上げを継続するのは難しい』といった意見もあります。まさにわれわれ消費者も含めて、適切な値上げを受け入れる必要があるということです」
■「適正な価格設定」で賃上げ・消費の活性化へ
藤井キャスター
「日本経済全体のことを考えれば、『少しくらい物価が高くても、値上げを受け入れなければならない』と考えなければならない時代になったと思いますが、その値上げ、賃上げについての考え方は変わってきていると考えていいんでしょうか?」
城間企業担当
「長く続いたデフレの中でコストを切り詰めて利益を捻出するのが良しとされてきた価値観から、適正な価格設定によって個々の企業が利益を得ることが賃上げ・消費の活性化につながって、日本経済を好転させていく。こうしたことの理解や取り組みが進めば賃上げも広がっていくと信じて、まさに今が踏ん張りどころとなっています」