ミャンマー“民族融和のともしび“東京から…在日ロヒンギャ「サイクロン被害」で募金活動
5月中旬、大型のサイクロンがミャンマーを直撃した。国内では、国軍がクーデターで実権を握ってから2年以上がたった今も、混乱が続いている。被害の全容が明らかにならず、国際機関の支援も行き届かないなか、日本に暮らすミャンマー出身の少数派イスラム教徒・ロヒンギャらが4日、東京で募金活動を行った。その活動には、ミャンマーでは衝突を繰り返してきた他民族にルーツを持つ若者の姿もあった。
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ミャンマーで少数派イスラム教徒・ロヒンギャが多く暮らす西部ラカイン州は、5月中旬に直撃した大型のサイクロンで甚大な被害を受け、人権団体などは数百人が死亡した可能性があると報告している。
また、隣国バングラデシュの難民キャンプにはミャンマーから逃れてきたロヒンギャが身を寄せていて、そこでも多くの難民が住まいを失った。
4日、東京・武蔵野市の吉祥寺駅前で、在日ロヒンギャやミャンマーに縁のある日本人ら約40人が募金活動を行い、サイクロン被害への支援を呼びかけた。
募金活動にはロヒンギャのほかに、仏教徒のビルマ族やシャン族にルーツを持つ人も参加した。一見、同じミャンマーにルーツを持つ人同士の協力は自然に見えるが、この活動には特別な意味があった。
ミャンマーには130以上の民族が暮らしているとされていて、人口の約7割は仏教徒のビルマ族が占めている。多数派の仏教徒と少数派のイスラム教徒ロヒンギャは衝突を繰り返し、特にミャンマー国軍は長年、ロヒンギャに対して苛烈な弾圧を行ってきた。
しかしこの日、吉祥寺駅前では、民族や宗教対立の壁を越えて共にミャンマーへの支援を呼びかける人々の姿があった。
2017年に来日したビルマ族のスーさん(24)も募金活動に参加。街ゆく人に興味を持ってもらえるよう、笑顔で声かけを続けた。ロヒンギャとの活動についてスーさんは、「同じミャンマー人として助け合いたい」と強調した。スーさんの知人であるビルマ族の男性らも、街頭に駆けつけた。
シャン族にルーツを持つ父と日本人の母のもとに生まれた姉妹も、支援を呼びかけた。姉(20代)は、「ロヒンギャの人たちも私たちも、同じミャンマー出身の仲間。みんなでミャンマーのために何かしたいと思って参加した」と力強く語った。
妹(10代)も、「少し前からミャンマーのための募金活動でロヒンギャの人たちと関わるようになった。民族の壁は感じたことがない。みんな同じ血が流れているミャンマー人だと思う」とはにかんだ。
在日ビルマロヒンギャ協会のアウンティン副会長によると、この日だけで26万5982円が集まり、全額が現地に届けられるという。