【中国・最新兵器】航空ショーに多種のドローン…ウクライナ戦で注目高まる中、途上国に輸出拡大狙いも?
中国の広東省珠海市で13日まで開催された中国最大の航空ショーでは、最新のステルス戦闘機や中国空軍の活動範囲を拡大させるべく投入された新型の空中給油機などが姿を見せた。
またウクライナの戦闘で注目される軍用ドローンも多くの種類がみられた。
まず連日4機編隊でのデモ飛行を行ったのは中国軍に配備が進むステルス戦闘機「殲20」。中国メディアは国産エンジンを採用していて、高速旋回、低空飛行、垂直上昇など空中での高い機動性を示したとアピールした。
中国メディアによると「殲20」は全長約21メートル、高さ約5メートル、超音速でも空気抵抗が少ない機体設計を採用した中国の第5世代の戦闘機。2011年に初飛行、2016年に一般公開された。遠くを飛行する敵機も探知可能なレーダーや最新の照準システムを装備し、他国軍機を識別するという。機体にはレーダーに捕捉されにくい構造や外装素材が採用されているとする。
「殲20」は中国空軍最新装備の"象徴"として8月に台湾周辺で行った大規模軍事演習の際にも参加したとの映像が配信された。ただ、アメリカのF-22戦闘機に比べて性能が劣る点もあるとの見方もある。
また「殲16」の飛行の様子も。中国メディアによると「殲16」は対空、対艦攻撃も可能な多目的戦闘機で、台湾周辺にも頻繁に飛来が報告されている。
ウクライナの戦闘で注目が高まる軍用無人機も様々な種類がみられた。
展示会場には初披露となる大型の偵察・攻撃型無人機「翼竜3」も登場。「翼竜3」は胴体の長さが12.2メートル、翼の幅は24メートル。中国メディアによると中高度で最大1万キロの飛行が可能で、ミサイルなどの搭載が可能だという。設計担当者は「翼竜3の搭載量はあらゆる面で既存の無人機を超越している。長距離飛行が可能で遠隔地の偵察、監視も可能だ」と胸をはった。
また、沖縄本島と宮古島の間を通過し自衛隊機がスクランブル発進もしたことがある「TB-001」系統の「TB-001A」も登場。中国メディアによるとTB-001Aは従来のTB-001に比べて翼などの下のハードポイント(機体の外に武器を吊り下げるための場所)が8カ所から12カ所に増えたほか、翼の端にウイングレットをつけ、空気抵抗を少なくして燃費を向上させているという。
また、複数の無人機が同時に飛び立ち空中を集団飛行。目標物である別のドローンに体当たりして撃墜する映像もみられた。この他、無人機関連では「アンチ・ドローン兵器」の展示コーナーも。担当者は地上からドローンを落とす装備について、一機当たりの撃墜コストが安く済むとアピールした。
さらに、中国軍が最近、イチ押しで宣伝している空中給油機「運油20」も登場。8月の台湾周辺軍事演習の際にも中国軍の戦闘機に空中給油している映像を国営メディアが配信した。中国空軍の航続距離を伸ばし、台湾の東側の海域でも十分に活動できることを宣伝し台湾への圧力を強めるアピール材料にも使われている。
この他、「直10」あるいは「武直10」と呼ばれる中国陸軍などが採用する攻撃ヘリコプターやATV(全地形対応車)を輸送ヘリで空輸し、別のヘリから降下した兵士らが乗り込むと高速で進攻を開始するというパフォーマンスも披露。離島への奇襲進攻も想定した装備とみられる。
■“戦闘能力”を宣伝...販路拡大狙う動きか
さらに国営メディアは、中国の国有企業「航天科技集団」がイベント期間中に累計で500億元(およそ1兆円)を超える契約を結んだと伝えた。国有企業の担当者は「我々や中国の航空宇宙技術へのお墨付きだ」と胸を張った。
前回2021年の航空ショーの時と比べて気がつかされるのは、中国側の担当者が最新の無人機などの"戦闘能力"をよりはっきりと宣伝するようになっている点だ。ウクライナ侵攻をめぐるロシア軍の苦戦で、その威信に翳りが見える中、中国としては国産兵器の優位性を強調することで、間隙を縫うように販路拡大を狙っているようにも見える。
(NNN中国総局 富田 徹)