分断進む 連邦裁判所が「中絶の権利」覆す判断 中絶支援施設で不審火も アメリカ
アメリカの連邦裁判所が下した「中絶の権利」を覆す判断が、さらなる分断を招く事態となっています。アメリカ西部・コロラド州にある中絶を支援する施設では、放火とみられる不審火も起きていました。
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今、「女性の権利」の訴えが全米に広がり続けています。
24日、ロサンゼルスでは、中絶の権利を訴えるグループと警察官が衝突しました。中西部・アイオワ州では中絶の権利を訴える人々と車の運転手がトラブルになりました。各地で起きた激しい衝突のきっかけは、24日に出された連邦最高裁の判断です。
最高裁は、1973年に「中絶を憲法上の権利と認める」とした判決を半世紀近く立った今、覆す判断を下したのです。ガットマッハー研究所によると、今回の判断で、全米の約半数の州で中絶が禁止、または、規制される見通しです。
最高裁の判断に、バイデン大統領は「最高裁はひどい判断を下したと思う」と、強い言葉で非難しました。
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西部・コロラド州は、中絶の規制が進むとみられる州に囲まれ、今後、他の州からの中絶希望者の急増が予想されています。そのコロラドで40年以上前からある中絶クリニックの院長・ウォーレン・ハーン医師はスタッフの拡充なども計画し、増加が見込まれる州外からの中絶希望者に応えようとしています。
中絶クリニックの院長 ハーン医師
「今回の判断で、女性が必要な医療を受けられずに、死亡することになると思う」
一方、クリニックの近くでは――
記者
「火事があった建物の入り口前に置かれているのは、焼けたあとの家財道具でしょうか。中絶措置を含む妊婦を支援する施設だったということです」
外壁には「中絶が安全でないなら、あなたたちも安全ではない」との落書きもありました。地元当局などは、放火とみて調べています。
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こうした中、今回の判断でがぜん勢いづいているのが、トランプ前大統領です。
トランプ前大統領
「最高裁は、憲法の勝利、法の支配の勝利、何よりも生命の勝利を言い渡した」
トランプ氏は、大統領在任中に中絶に慎重な立場の保守派の判事を3人も指名できたことが、今回の判断につながったと成果を強調しました。
11月に迫る中間選挙、そして、出馬に意欲を見せる2年後の大統領選に向けても、トランプ氏が存在感を示すことにつながりそうです。