【解説】日本と北朝鮮“極秘接触”か 北朝鮮側の狙いは?
韓国の大手紙「中央日報」は13日朝、日本と北朝鮮の代表団が5月にモンゴルで会談したと報じました。日本側からは政治家も参加したと伝えていますが、協議の内容については、はっきりしていません。
◇
鈴江奈々キャスター
「このニュースについて、NNNソウル支局長の横田明記者とお伝えします」
■北朝鮮側の狙いは?
鈴江キャスター
「会談が行われたのが事実だとすると、北朝鮮側の狙いはどこにあると考えられるでしょうか?」
NNNソウル支局長 横田明記者
「外交的な突破口を模索するため、あえて日本と会談することにしたという見方があります。そもそも北朝鮮はことし3月、金正恩総書記の妹・与正氏が『日本とのいかなる接触や交渉も無視して拒否する』と明らかにしています。それにもかかわらず会談したとなれば、北朝鮮としては5年前の米朝首脳会談以降はアメリカとの対話が実現できていない中、日本と韓国、アメリカの3か国が関係を強化していて、新たな外交的な手掛かりを模索する中で、日本と接触をしたという見方ができます」
鈴江キャスター
「日米韓のなかで、日本が最も交渉しやすいと北朝鮮が考えたということでしょうか」
横田記者
「その可能性はあります。ある外交筋は『岸田総理が首脳会談の実現を求めていたこともあり、日米韓の連携に北朝鮮がくさびをうとうとしている』と分析しています」
鈴江キャスター
「北朝鮮側の出席者は『偵察総局』ということです。日本では、あまり聞き慣れないのですが、どういう組織なのか、そして、そこから見えることは何かあるのでしょうか」
横田記者
「偵察総局はいわばスパイ活動も行う組織で、金総書記直轄の組織とされています。最高指導者と繋がっている組織が交渉の舞台に出てきたとなると、その先に首脳会談を見据えているという可能性もあります」
「ただ、偵察総局は、かつてマレーシアで起きた金総書記の兄、金正男氏の暗殺にも関与が指摘されるほか、外国人の拉致など対外工作を担う組織とされています。その人たちが交渉にあたっているとすれば、拉致問題の解決を求める日本側に対し、どういうメッセージを伝えてきているかは専門家の中でも見方がわかれています」
■拉致問題が進展しない背景は
鈴江キャスター
「水面下での日本と北朝鮮の接触は、これまでも行われてきたと思いますが、拉致問題がなかなか進展しないその背景には、どんなことがあると考えられるでしょうか」
横田記者
「北朝鮮としては一貫して拉致問題は解決したという立場を示しています。日本が拉致問題を持ち出すならば、交渉しないとしています。そのため、拉致問題をめぐっては日本側の考えと平行線をたどっていて、進展していないというのが実情です」
鈴江キャスター
「このタイミングで会談があったとすると、北朝鮮側の国内情勢も影響していると考えられますか」
横田記者
「そこも影響しているとみられます。北朝鮮側からは、今回、外貨稼ぎ担当も参加したとされていて、落ち込んでいる経済を立て直す狙いがあるとみられます」
「そもそも北朝鮮は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、国境を約4年にわたり事実上、封鎖しました。これにより、北朝鮮国内では物資や食料の不足が深刻化していると指摘されていて、こうした状況を打破するため、交渉に参加したものとみられています」