戦闘激化 ロシアが病院“空爆”子供らが犠牲に…
ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから2週間がたちましたが、病院が爆撃されるなど、戦闘は激化しています。10日の日本時間の午後5時ごろから、両国の外交トップが侵攻後、初めての直接会談に臨んでいて、事態の打開につながるか注目されています。
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9日、ウクライナ首都キエフの西にある都市ジトーミルで撮影された映像に映っていたのは、上空をごう音と共に通過する軍用機です。その後、爆発音と、何かが爆発する様子も捉えられていました。ジトーミルの市長によると、ロシア軍機が夜間に街を空爆し、火力発電所などが被害を受けたということです。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってから2週間。人道回廊での住民の避難が進められる中、9日、ウクライナ南東の町マリウポリでは、産科・小児科病院で爆発がおきました。地元当局によると、ロシア軍による空爆が行われたということで、病院の敷地内は巨大な穴もできていました。
病院からケガをした妊婦が運び出されるなど、混乱が続く中、再び爆発音のようなものが聞こえ、人々は建物の中に避難しました。
地元警察
「ロシアは重大な犯罪を犯しました。女性や子供が負傷した。これは戦争犯罪です」
地元当局によると、この空爆により子供1人を含む3人が死亡。子供や女性、医師ら17人が負傷したということです。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、Facebookに動画を公開し、ロシアを激しく非難しました。
ウクライナ ゼレンスキー大統領
「病院にいた子供や妊婦、医者や看護師はロシアにとってなんの脅威になるんだ。小児病院の爆破は、ウクライナへの虐殺が行われているという証明だ」
マリウポリの町を捉えた衛星写真で去年6月と比べると、攻撃により大きく町の形が変わっているのがわかります。住宅街も大きな被害がありました。
地元当局によると、マリウポリは9日間にわたり町が包囲され、民間人1207人が死亡したということです。
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一方、ロシア軍に制圧されたチェルノブイリ原発について、ウクライナの原発を運営する企業は9日、電力の供給が停止したことを明らかにしました。
ただIAEA(=国際原子力機関)は、電力の供給がなくても使用済み核燃料を冷やす十分な冷却水があるため、安全性に重大な影響を与えるものではないとの見解を示しています。
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ジャパンプレスに所属するジャーナリスト、佐藤和孝さんが取材するウクライナ西部リビウでは、ビール工場で火炎瓶が作られていました。
「ビール製造をやめて、なにか役に立つものに使いたいと思い、火炎瓶を作っています」
一本取り出してみると、ラベルに書かれていたのは、豪華な椅子に座る丸裸のプーチン大統領でした。
佐藤さん
「これおもしろいね」
火炎瓶を製造する人
「『プーチンくそったれ』って名前です」
火炎瓶は自分の身を守るためはもちろん、前線に送ることもあるといいます。
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止まらないロシアの軍事侵攻に、違う角度から攻撃する若者もいました。
友人と、自宅からロシアメディアなどへサイバー攻撃をする男性です。
「(サーバーをダウンさせて)ここで今起きていること全てを ロシアに流している」
「ロシア人に真実の情報をどのように伝えられるかを考えて作業している」
情報統制を強化し、軍事侵攻に批判的な報道など徹底的に取り締まるロシア。「ロシアにいる人が知ることができないウクライナの現状を映像で流したい」と話します。
男性
「ロシアが崩壊しなければ、ウクライナに将来はない。そのために僕らはできることをしている」
ウクライナの未来のため。国境近くの街では、国民がそれぞれできる限りのことを尽くしていました。
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一方、雪が降りしきる隣国のポーランド。日中でも気温が氷点下となるなど、厳しい寒さの中でも避難するウクライナの人々の姿が途絶えることはありません。
避難してきた女性
「子供がとても寒がっているので、できるだけ暖かくしてあげてます」
避難してもなお、過酷な環境での生活を強いられていました。この寒さで命を落とした子供もいるということで、国境を越えたすぐの場所には、新たに医療用のテントを設置して対応に当たっています。
国連によると、ウクライナから国外へ避難した人は215万人以上にのぼっているということです。
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こうした中、10日、日本時間の午後5時すぎ、トルコのアンタルヤの会談場所に、ロシアのラブロフ外相が到着しました。その約10分後、ウクライナのクレバ外相も会場入りしました。トルコのチャブシオール外相が仲介する形で、3者会談が始まったのです。
ロシアによる侵攻後、初めて外交トップが顔を合わせた形です。民間人の犠牲が増える中停戦への道筋を見いだせるのか注目されています。