ロシア軍を押し返す…首都キーウでウクライナ軍が“反転攻勢”
ロシアがウクライナに侵攻してから、24日で1か月です。戦闘が激化する中、ウクライナは首都キーウに攻め込もうとするロシア軍を大きく押し戻し、反転攻勢に出ているということです。
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ウクライナの首都キーウでは23日、住宅街が攻撃を受け、消火活動が行われていました。
ロシア軍の攻撃に徹底抗戦を続けるウクライナ。アメリカの国防総省の高官によると、キーウ東部では、ロシア軍が中心部まで20~30キロの地点にいたものの、ウクライナ軍が反撃をし、55キロの地点までロシア軍を押し返したということです。
さらに、ロシアのプーチン政権の高官、チュバイス大統領特別代表が辞任し、出国するなど、政権のほころびも見え隠れしています。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から1か月。ウクライナのゼレンスキー大統領は、自身のSNSを使い、世界中に向け英語で次のように呼びかけました。
ゼレンスキー大統領
「ウクライナを支援している人、自由を支援している皆さんに感謝します。しかし、戦争は続いています。民間人に対するテロも続いています。もうすでに1か月…こんなに長く…。戦争に反対するため立ち上がるようお願いします。きょうから、そしてこれからも」
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1か月前、国際秩序を揺るがし、一方的なウクライナへの軍事侵攻に踏み切ったロシア。
プーチン大統領は「ウクライナを占領する計画はない」としていましたが、その攻撃はウクライナ全土に及んでいます。首都キーウのテレビ塔や、第2の都市ハルキウの州の庁舎にもミサイルが撃ち込まれました。
さらに、民間施設もその標的になっています。病院や学校なども攻撃を受け、多くの犠牲者が出ています。
OHCHR(=国連人権高等弁務官事務所)によると、これまでにウクライナで、民間人977人が命を落としたということです。
ただ、激戦地の状況は、把握できないのが実情です。人道的な危機に陥っている南東部マリウポリでは、3000人以上が死亡したともいわれています。また、UNHCR(=国連難民高等弁務官事務所)によると、約400万人がウクライナ国外に避難しています。
23日、首都キーウで取材を続けるジャーナリスト・佐藤和孝さんは、「普通の一般市民が住んでいるアパートが攻撃されています」と伝えました。
23日の朝、攻撃を受けたばかりだというアパート。住民は「ガラスでいっぱいです。民間人を攻撃することは理解できません」と憤りを隠せない様子でした。
そのアパート近くの広場で取材をしていると、着弾音のようなものが響きました。
佐藤さん
「相当近いね。町の中心にいるのと、全然さく裂音が違うよね」
実は、佐藤さんが取材をしている場所は、首都陥落を目指すロシア軍との間で、激しい市街戦が続くイルピンから十数キロに位置する場所。イルピンから避難してきた人たちが、一時的に身を寄せ合っていました。
イルピンから避難した人
「(イルピン)全体が被害を受けました。近所に爆弾が落ちて、私の家の窓も割れました」
そのイルピンについて、キーウのクリチコ市長は23日、大部分を奪還したと発表しています。
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そして、ロシアによる侵攻は、ウクライナだけでなく、周辺諸国でも大きな変化が出ています。
ロシアによるウクライナ侵攻から1か月。一方的な軍事侵攻で、ロシア国内にも大きな変化がありました。一見、平穏な日常に見えるモスクワですが、世界中からの経済制裁による物価の上昇などの影響も出始めています。
モスクワ市民
「紙おむつの値段が2倍になりました。あっというまに」
そして、いま増えているのがロシアから脱出する人たちです。
ロシアのサンクトペテルブルクから、フィンランドのヘルシンキに電車でやってきた夫婦は、ロシアの今後に不安を覚え、国外で子供とともに一緒に生活することを決断したといいます。
ロシアから脱出する夫婦
「まだサンクトペテルブルクで生活することは可能ですが、近々、困難になるのではと懸念しています」
「今ロシアは2つに分かれています。政府を支持する側とそうでない側。(お互いへの)怒りが空中を漂っています」
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さらに、ロシアによる侵攻は、ヨーロッパ全体の安全保障環境を激変させました。
ロシアと約1300キロにわたって国境を接するフィンランドを訪ねると、首都ヘルシンキ中心部に、地下30メートルに作られたプールがありました。有事の際はプールの水を抜き、地下シェルターとして使うといいます。
また、地下鉄も有事の際はシェルターとして使うなど、歴史的に旧ソ連、ロシアからの攻撃に備えた地下の整備が進められてきました。
今回、ウクライナへの侵攻を目の当たりにして、国民は――
ヘルシンキ市民
「生まれてからずっとロシアの攻撃を恐れてきましたが、現実になってしまいました」
「国民の間では国防や軍隊、そして『NATOに加盟すべきか』 という議論が注目されています」
フィンランドではこれまで、NATO加盟を支持する国民は2割程度でしたが、ウクライナへの侵攻後は6割を超えました。
さらに、ヘルシンキ郊外で行われていたのは予備役の訓練です。
訓練に参加した少年(16)
「ウクライナの状況を見て、愛国心のような気持ちができました。『自分の国を守る責任が私にある』という気持ちが」
周辺諸国で高まる危機感。ウクライナでの民間人の犠牲も増える中、一刻も早い停戦が求められています。