民主的選挙求めデモ 香港の若者たちの思い
民主的な選挙を求めるデモが2か月以上続く香港。デモの長期化に対する住民らの反発も高まるなか、なぜ若者たちはデモを続けるのだろうか。高井望記者が取材した。
民主的な選挙を求めるデモ隊は、現在も2か所の道路でデモを続けている。リュウ・ホウブンさん24歳。1年間の日本滞在経験がある彼女は2か月間以上、この道路で寝泊りしている。リュウさんの願いは、2017年の行政長官選挙で、誰でも立候補できる仕組みが導入されること。今月、日本で衆議院選挙が行われることをうらやましいという。日本では選挙に行かない若者が多いことに対して、リュウさんは「それはムカつく。私たちは権利のために、こんなに命をかけて戦っているのに」と語る。
リュウさんらデモ隊はいま、苦しい立場にたたされている。先月下旬から強硬な姿勢でデモ隊の排除を始めた当局。先月25日からの2日間では、繁華街の拠点だったモンコック地区で強制排除を実施し、159人を逮捕した。梁振英行政長官はデモの長期化に対する住民の反発を背景に、今後も強制排除を続ける方針を明確にしている。地元の住民は「この占拠の時間が長すぎました。もし意見があれば正しいルートを通じて訴えるべきで道路を占領すべきではないわ」と話す。
モンコックの強制排除翌日、宝石店を訪ねてみた。強制排除で道路が開通したことをうけセールを行っていた。壁には“政府に感謝する、警察に感謝する”と書かれている。この店では、来店客の8割を占めていた中国人観光客がデモ開始以降、ほとんど来なくなった。地元メディアによると、モンコック地区の小売店の実に4割が10月の売り上げを半分以下に落としている。宝石店のマネジャーは「年配の人や20~30歳以上の人は、経済が悪いこの状況を知っています」と語る。
一方のリュウさん。選挙を求める根底には、今の香港に対する不満があるという。リュウさんが私たちを案内したのも、強制排除後のモンコック地区だった。リュウさんは「今は同じような店ばかりになってしまい、香港人としても見どころがない」と話す。大通りをよく見ると、宝石店と時計店が多いのがわかる。中国人観光客のおかげで潤う店がある反面、若者にとっては好きだった店がどんどんなくなるという。
次に訪れたのは、リュウさんがよく通う飲食店。ここのワンタンメンが好きということだが…リュウさんは「今は28ドル(約480円)だけど、前は15ドル(約230円)で食べられました。昔と比べると高い。でもおいしいからしょうがない」と苦笑いしながら話す。店主によると家賃が高騰しているので、値段を上げざるを得ないという。街の不動産の価格をみても、上昇する一方。中国人投資家が不動産を大量購入するのが、原因のひとつといわれている。その一方で、リュウさんのような若者の給料は上がっていない。リュウさんは、香港の行政長官は中国政府の方ばかりを向くのではなく、もっと住民のことを考えてほしいと訴える。そして「今のままでは何も変わらないから、選挙を通して、みんなの思いを通して、選挙は必要だと思います」と思いを語る。
地元メディアは、香港政府庁舎前の一部の道路で来週にも強制排除が行われる見通しだと報じている。デモ隊内でも撤退論を含む、戦略の練り直しが進められているが、リュウさんは、最後まで道路の占拠を続けたいとしている。