×

イギリスで5年ぶり総選挙 政権の行方

2015年1月3日 10:04

 イギリスでは5月7日、650議席を争う総選挙が行われる。キャメロン首相率いる第1党の保守党は過半数に満たない303議席で、56議席を有する自由民主党と連立政権を組んでいる。一方、保守党とともに「二大政党」の一角で、2010年の前回総選挙で政権を奪われた野党・労働党は257議席を保有。総選挙では、与党が連立政権を維持できるかが焦点だ。

 選挙での最大の争点は財政の健全化だ。他の欧州各国同様、イギリスも景気低迷から脱却したとは言い切れず、国の借金も増え続けている。キャメロン政権はこれまで財政立て直しのため付加価値税の増税の他、公務員数や児童手当の削減など財政緊縮策を推し進めているが、借金は減らず、成果を実感できない国民も多い。これに対し、労働党のミリバンド党首は富裕層に対する増税や医療・教育分野での予算確保など緊縮策の見直しを掲げ、「借金を減らし給料を押し上げる」と訴えている。

 一方、外交での争点はEU(=ヨーロッパ連合)からの離脱問題だ。ギリシャなど他の加盟国へ財政支援が続く中、「なぜ自分たちの税金で他国を助ける必要があるのか」との思いや、「このままでは移民流入で雇用や福祉を圧迫される」との不信感が渦巻く。こうした声の受け皿となっているのが、「反EU・反移民」を掲げるイギリス独立党(UKIP)だ。UKIPは2014年5月のEU議会選挙でイギリスに割り当てられた73議席中24議席を獲得し、第1党に躍り出た。国政でも、保守党を離党してUKIPに移った議員2人が補欠選挙で勝利するなど勢いを増している。

 危機感を強めたキャメロン首相は2014年、移民の福祉手当に制限を設けるため、EU側と交渉することやEU離脱の是非を問う国民投票の実施を表明するなど挽回に躍起だ。一方、政権奪還を目指す労働党は支持率で保守党を上回るものの、懸念材料を抱えている。その1つが2014年9月に北部・スコットランドで行われた独立の是非を問う住民投票だ。労働党にとってスコットランドはいわば「牙城」。前回の総選挙でも59のうち41選挙区で勝利した。しかし、住民投票を境に様相が一変した。独立賛成派をけん引したスコットランド国民党が支持を拡大し、総選挙でも労働党から議席を大きく奪うとみられている。

 12月21日~22日に行われた世論調査(YouGov/TheSun)での支持率は、労働党が36%、保守党が32%。自由民主党が6%、UKIPが16%などとなっている。選挙は全議席が小選挙区制のため、支持率が高く大勢の立候補者を擁立する「二大政党」が議席を獲得しやすい。現状では保守党と労働党の接戦が予想されるが、ともに過半数に至らず再び「ハング・パーラメント(中ぶらりんの議会)」になるとの見方が有力だ。