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ノーベル生理学・医学賞 発表直後にカタリン・カリコ氏を直撃 不遇の時代も…科学への思いとは

2023年10月3日 21:58
ノーベル生理学・医学賞 発表直後にカタリン・カリコ氏を直撃 不遇の時代も…科学への思いとは

ノーベル生理学・医学賞に新型コロナワクチン開発の立役者カタリン・カリコ顧問ら2人が選ばれました。私たちは発表直後のカリコ氏に直接、話を聞くことができましたが、その最中も祝福の電話が殺到していました。

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ノーベル生理学・医学賞に選ばれたのは、新型コロナワクチンの基礎となる技術を発見したバイオ医薬品企業「ビオンテック」のカタリン・カリコ顧問(68)と、ペンシルベニア大学のドリュー・ワイスマン教授(64)です。

ビオンテック カタリン・カリコ顧問
「私たちは賞のために働いているわけではありません。大切なのは人々を助ける製品をつくることです」

ペンシルベニア大学教授 ドリュー・ワイスマン教授
「社会が前進するためには科学が必要です。過去1000年間の人類の前進はすべて科学に基づいている」

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実は発表から約3時間後、私たちはカリコ氏を自宅で直撃していました。

カタリン・カリコ顧問
「まだ実感がわいていません。いろんな人と話したり、電話したりで、今夜になればもっと考えることができるかもしれません。ご覧の通り、電話が鳴りっぱなしで大忙しです」

取材中も、電話が鳴り響いていました。

1955年に生まれたカリコ氏。故郷ハンガリーには彼女の功績をたたえる壁画が描かれています。しかし、彼女の遺伝子物質の研究は順風満帆ではありませんでした。

当時、ハンガリーは社会主義体制下で経済が停滞していました。カリコ氏の研究費は打ち切りに。研究を続けるため、カリコ氏は30歳で家族とアメリカに移住することを決断したのです。

しかし、不遇の時代が続いたといいます。

こうした長年の研究の成果が、新型コロナのメッセンジャーRNAワクチンの開発をわずか1年で成功に導き、ノーベル生理学・医学賞へとつながったのです。

――パンデミック(=世界的大流行)中にワクチンが承認され、みんなが接種したことはどう感じた?

カタリン・カリコ顧問
「もちろんそれは重要なことでした。私たちは、このワクチンがうまく機能することを期待していましたから」

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カリコ氏とワイスマン氏の2人が所属するアメリカ・ペンシルベニア大学の学生からは「私もいつか受賞したいです」「失敗してもめげずに勉強を頑張ろうというモチベーションが高まりました」といった声が聞かれました。

現在68歳のカリコ氏は、子どもたちの活躍に期待しています。

カタリン・カリコ顧問
「もっと科学の重要性を世の中に浸透させて、子どもたちに勉強して科学者になってもらいたいです。もっと多くの科学者が必要です。科学者になることは楽しいと伝えたいです」

ちなみに、カリコ氏の娘・スーザンさんも偉業を達成しています。実は、ボート競技のアメリカ代表選手となり、北京とロンドン、2度のオリンピックで金メダリストになりました。

カリコ氏の精力的な研究人生は、まだまだ続きます。