加速する北方領土開発、ロシアの狙いとは?
ロシアと日本の間で未解決の問題となっている北方領土。いま、ロシアは北方領土での開発を加速させている。その狙いとは?
【プーチン大統領の訪日計画の一方で…】
日本とロシアの両政府はプーチン大統領の年内の訪日に向けて検討を進めている。こうした中、そのプーチン大統領の側近・トルトネフ副首相が13日、北方領土の択捉島を訪問。トルトネフ副首相は、若者の愛国主義を高めるためのフォーラムでこう語り、北方領土を含む極東の開発が重要であると強調した。
「プーチン大統領は極東の発展を21世紀の国家の優先課題だと判断しました。エネルギー、物流、産業、観光、水産の分野で計画を実現させます」
【日本政府「極めて遺憾」と抗議】
日本政府は、北方領土は日本の固有の領土との立場を示していて、ロシアの副首相の訪問は「極めて遺憾である」と抗議した。にもかかわらず、メドベージェフ首相は17日、訪問先のクリミアで「いま、極東の北方領土でフォーラムが行われている。面白くて意味深いフォーラムだ。可能であれば私も立ち寄りたい」と述べ、北方領土を訪れる意向を示した。ロシアメディアは、この週末にもメドベージェフ首相が北方領土を訪問する可能性があると報じている。
【北方領土占領、ロシア側の主張】
第2次世界大戦の終戦間際の1945年8月9日。旧ソ連は日ソ中立条約に反して、対日参戦し、日本がポツダム宣言を受諾したあとも攻撃を続け、9月5日までの間に北方領土を不法占領した。ロシア軍事歴史会学術研究所・ニキフォロフ所長は記者会見で、北方領土の占領についてロシア側の主張をこう述べた。
「北方領土と千島列島にいた日本軍をソ連に降伏させるために、軍事侵攻する必要がありました」
第2次世界大戦の結果として北方領土は現在、ロシアの領土なのであり、4島の返還を要求する日本側は、歴史をねじ曲げようとしているというのがロシア側の主張だ。
【空港建設も…開発加速の裏には】
北方領土が占領されてから70年。北方領土には現在、約1万6000人のロシア人が暮らしている。ここ数年、択捉島では、建設作業のためのトラックの往来が目立つようになったという。2006年にロシア政府が採択した開発計画によって、住宅や病院などの公共施設の整備が急速に進められているのだ。また、去年9月には新たな空港も開業した。
イトゥルプ空港 セルゲイ・ゾトフ空港長「“極東の奇跡”なんです。中型機にも対応しています」
2300メートルの滑走路を備え、ロシア本土との間で住民・観光客の行き来や、物流が増えるとみられている。さらに、ロシア政府は今月10日、来年から10年間の新たな開発計画を公表した。北方領土と千島列島に投じられる金額は、日本円で約1300億円で、北方領土に光ファイバー通信網を整備する計画も盛り込まれた。プーチン大統領は2013年4月にこう話していたことがあった。
「北方領土にはロシアの他の地域と同じくロシア国民が暮らしている」「我々は彼らの生活を考える必要がある」
ロシアはいま、北方領土の生活環境をロシアの本土並に近づけることで、住民の定着や外国からの投資の拡大を図り、実行支配をさらに強化する狙いがあるとみられている。