大規模軍事パレード 金第1書記の狙いは?
北朝鮮は10日、労働党の創立から70年を迎えた。首都・平壌では大規模な軍事パレードが行われている。「朝鮮労働党創立70年式典」のパレード会場から原田敦史記者が伝える。
軍事パレードは日本時間10日午後3時半に始まった。当初、午前中に行われるとみられていたが、こちらで雨が降っていたこともあってか、午後の開催となった。
金正恩第1書記がバルコニーに姿を見せると、会場からは歓声が沸き起こった。金第1書記は20分以上にわたって演説し、軍事優先の政策で強い国になったと強調した。
金第1書記「侵略と戦争で肥大化したアメリカに立ち向かって敗北させ、いかなる制裁も突破する。我が軍と人民の不屈の気性と団結力が、敵を不安と恐怖に追い込んでいる」
ただ、金第1書記は、核開発や人工衛星の打ち上げに触れることはなく、全体的に対決色は抑えめだった。そして「人民の幸福を達成する」と庶民を重視する言葉を繰り返し、軍事と経済の開発を並行して進めていく姿勢を強調した。
大規模な軍事パレードを行った北朝鮮の狙いは主に二つあり、一つは国内向けの目的。北朝鮮では、平壌などで裕福な層も出現しているが、地方では厳しい暮らしを余儀なくされている人も多くおり、格差が広がっている。派手な祝賀行事で愛国心を高め、団結を図りたい狙いがあるものとみられる。
もう一つは、アメリカや日本、韓国といった外国向けの目的だ。軍事力を誇示し、圧力には屈しない姿勢を明確にする。ただ北朝鮮は、創立70年にあわせた事実上の長距離弾道ミサイルの発射は先送りした。そのヒントは、金第1書記の傍らでパレードを見守っていた人物、中国の劉雲山政治局常務委員にある。
金第1書記の就任後、中国の最高指導部メンバーが北朝鮮を訪れたのは初めて。新華社通信によると、金第一書記は9日の会談で、「高いレベルで密接な往来を保ち、さまざまな分野で交流や協力を強めたい」と述べた。節目の行事を機会に冷え込んでいた中国との関係改善に意欲を示した形だ。ただ、核問題をめぐっては微妙な立場の差もうかがえ、中朝関係が本格的に改善に向かうかどうかは、なお予断を許さない。