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サウジとイランの緊張高まる 影響は?

2016年1月4日 19:34
サウジとイランの緊張高まる 影響は?

■サウジとイラン緊張高まる きっかけは?

 中東の大国、サウジアラビアとイランの間で緊張が高まっている。イランのテヘランにあるサウジアラビア大使館が襲撃された。きっかけはサウジアラビア政府が2日、2011年の「アラブの春」の際、反体制デモを主導したとしてイスラム教シーア派の指導者ニムル師の死刑執行を発表したことだった。

 大使館襲撃を受け、サウジアラビア政府は3日、イランとの外交関係を断絶すると発表した。これに対し、イラン外務省は声明を発表し、外交断絶はサウジアラビアが国内問題から目をそらすために行ったもので、「襲撃事件を利用して緊張を高めている」と非難した。

 今回の出来事の直接的なきっかけはイスラム教の宗派の違い。イスラム教にはスンニ派、シーア派という大きな2つの宗派があり、サウジアラビアはイスラム教の聖地メッカを抱え、スンニ派の盟主を自任している。一方のイランはシーア派の大国で、両国は宗派上対立している。しかし、今回の出来事は両国の単なる宗派対立には収まらない。それが、内戦状態が続くシリアの問題だ。


■“共通の敵”打倒の機運が高まる中…

 なぜ今回の出来事がシリア問題にも関わってくるのか?

 サウジアラビアとイランはともに中東の地域大国で、それぞれ存在感を高めようと、異なる立場でシリア問題に関わっている。

 シリア問題ではアサド大統領の処遇をめぐってアメリカとロシアが依然として対立しているが、サウジアラビアは宗派上の違いからアサド政権を敵視し、アメリカと同じく、シリアの反体制派を支援している。一方、イランは宗派が近いアサド政権を支援し、ロシアと距離を近づけている。この対立が決定的になったということは、両国が問題の解決に向けて協力していく可能性が遠のくことになる。

 去年11月に起きたフランス・パリの同時多発テロを受けて、国際社会の中では、過激派組織「イスラム国」という共通の敵をまずは協力して倒そうという機運が高まっている。国連の安保理もアサド政権と反体制派が和平交渉を行うとする決議を採択し、その交渉が今月25日に開かれる方向で調整されている。行き詰まっていたシリア和平が新たな局面を迎えようとする中、事実上の当事者でもあるサウジアラビアとイランの関係が険悪になれば、お互いの妥協点はますます見いだしにくくなり、和平交渉に悪影響を及ぼすことが懸念される。


■両国の対立が日本に及ぼす影響は?

 こうした対立から、今すぐ日本に何らかの影響が出るというわけではないが、サウジアラビアとイランはともに資源大国。サウジアラビアは現在、日本にとって原油の輸入元第1位の国で、イランも核協議の最終合意を受けて経済制裁が解除される見通しで、今後、日本にとって資源の有力な輸入元になると期待されている。中東情勢がさらに不安定化すれば、中東のエネルギーに大きく依存する日本への影響もないとは言えない。