仕事で笑顔…難民キャンプに“希望の屋台”
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。7日は、「チョコでつながる」をテーマに、難民や生きがいについて、諏訪中央病院名誉院長・鎌田實さんとともに考える。
■鎌田さん、イラク難民キャンプへ
鎌田さんは、戦禍を逃れ、難民キャンプなどに避難しているイラクやシリアの病気の子どもたちを支援する活動をしている。チョコレートをインターネットなどで、ひとつ500円で販売しているのだが、原価や経費を差し引いた分は、病気の子どもたちの薬代などに使われている。
この“チョコ募金”についてはこれまでも紹介してきたが、今年もかわいい花の絵が描かれている。毎年、病気と闘う子どもたちにイラストを描いてもらっているのだが、今回、この金宝樹の絵を描いてくれたローリン(15)に会いに、鎌田さんは1月1日、イラクのクルド人自治区にある難民キャンプを訪ねた。
■白血病と闘う難民の少女
イラク北部の都市・アルビルから車で2時間ほどのシリア人難民キャンプ。ローリンさんはシリアで白血病の治療を受けていたが、内戦が激しくなり、3年前、国境を越えてイラクへ避難してきた。
ローリンさんは、チョコレートを手渡すとすぐに口に運んだが、あまり元気がない。実は去年、腸炎の疑いで手術し、この日もおなかが痛いと話していた。
白血病と闘っているローリンさんは、これまでも命を落としかねない状況に陥ったことがあり、ちょっとした痛みも本人や家族にとっては深刻な問題だ。また、ローリンさんの薬代や通院費もかかるため、父親は仕事を探しているが、難民キャンプの周辺では安定した収入が得られるような仕事はない。
■役割を得て笑顔に…希望の屋台
そこで、鎌田さんが代表をつとめるNPO法人が用意したのが、屋台。鎌田さんたちの代わりに、キャンプ内の難民たちに“屋台”で食事を提供することで、NPOから父親に1日50ドルが入る仕組みだ。この日は雨が降っていたにもかかわらず、屋台を出した途端にキャンプ中の子どもたちがやってきた。鍋に入っているのはそら豆を煮ただけのシンプルな料理だが、子どもたちには大人気。父親の隣にはローリンさんの姿も。屋台でお父さんを手伝うローリンさんにも、自然と笑みがこぼれる。
ローリンさんも屋台を手伝って笑顔。父親も鬱々(うつうつ)としていたが仕事があって今ではイキイキしている。夏の時期にはかき氷。その頃から彼は元気になって、家族全体が明るくなった。
■生きがいにつながる支援
きょうのポイントは、「生きがいにつながる支援」だ。人間が生きていくためには、仕事や自分の役割があるということがとても大事だ。難民たちも“生きがい”を得ることによって、自分自身の力でまた生きようという気がわいてくる。鎌田さんは、「今年の僕の目標、夢は、屋台を10台つくって、少しでも難民の人たちに生きがいや雇用を拡大したい」と話した。