生きるための支援を…シリア難民の窮状
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。21日は、「シリア難民の思い」をテーマに、諏訪中央病院名誉院長・鎌田實さんとともに考える。
■難民キャンプ シリア人夫妻の窮状
鎌田さんは、およそ10年前から、イラクのクルド人自治区などでシリア難民などを支援する活動を行っている。鎌田さんは今回、現地を訪れ、シリア難民の現状について、シリア人の家族に直接話を聞いてきた。
鎌田さん「たくさんの人がヨーロッパに向かっているけど、ヨーロッパに行く気は?」
夫「行きたいけど無理です」
妻「お金がありません」
この難民キャンプで支給されているのは、ひと月に1人あたり1万イラクディナール。日本円でおよそ1000円だ。
妻「(お金が)全然足りません。信じてください」
夫「働きたいけど仕事もありません。子供たちも仕事を探しているけど見つかりません」
また、親戚のほとんどがヨーロッパに渡ってしまったという別の男性は…。
男性「親戚が11人、ヨーロッパへ行きました。なぜ渡ったかというと仕事がないからです」
支援も少なく、働きたくても仕事もないため、仕事を求めてヨーロッパへ渡る人が多いと言う。そして男性は、難民キャンプでの厳しい現状を訴えた。
男性「仕事もない、支援も少ない。灯油も足りないけど、もらった灯油を売って金にして、食べ物や薬を買っています。(灯油は売りたくないけど)生きるためには仕方ないんです」
■欧州へ渡った難民も「困難な状況」
難民の人たちは、経済的に厳しい状況に置かれている。ただ、ヨーロッパへ渡ったからといってみんなが幸せに暮らせるかというとそうではない。
鎌田さんがイラクで難民支援を行う際、現地で通訳をしてくれていたクルド人の青年は、生まれた時から難民で、以前からヨーロッパへ行きたいと言っていた。そして去年、親戚を頼って、スウェーデンに渡った。鎌田さんは昨年末、この青年にイラクから電話をし、スウェーデンの状況を聞いた。
Q:スウェーデンの人は優しい?
青年「スウェーデンの人はとても優しいです。政府は難民のための場所探しなど、さまざまな課題に取り組んでいますが、2家族が1つの部屋で暮らすなど、すべてにおいて困難な状況でした」
青年は、スウェーデンには渡ったのだが、生活は厳しいと話していた。今後どうなるかはわからないが、これまでの難民キャンプでの生活よりは良くなると期待していると話していた。
■生きるための支援
きょう鎌田さんが一番伝えたいことは、「生きるための支援」。難民生活は長期化し、支援が徐々に手薄になり、劣悪な状態が続いている所もある。難民の彼らは、本当の願いはシリアへ帰ることだ。ヨーロッパへ行きたいのではないのだ。
そんな彼らを助ける方法は2つ。まずは、彼らの生活を支えてやること。そしてもう1つは、シリアの平和を実現してやること。しかし、平和の実現には時間がかかる。その間だけ、彼らの生活が少しでも良くなるよう、私たちは日本からも支援を続けることが必要だ。
鎌田さんは、「僕は、これからも(難民キャンプに)行き続けて、平和が来るまで通い続けようと思っています」と話した。