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フィリピンと経済関係強化 影響力増す中国

2017年1月20日 14:04
フィリピンと経済関係強化 影響力増す中国

 安倍首相は先週、フィリピンを訪問し、ドゥテルテ大統領の地元・ダバオを訪れるなど関係強化を図った。しかし、フィリピンでは今、中国の影響が強まっていた。その現状を取材した。

 NNNは、フィリピンの排他的経済水域内にある南シナ海のスカボロー礁周辺で撮影された映像を入手した。映像は先月撮影されたもので、スカボロー礁のすぐ近くで中国の公船が展開していることがわかる。

 この映像を撮影したフィリピンの漁民は「スカボロー礁に近づくと、中国海警に止められました」と語る。

 以前はスカボロー礁に近づく漁民に放水するなどして漁ができないよう妨害していた中国側。今も公船は展開し続けているものの、去年10月頃から急激に妨害が少なくなっているという。


■妨害が減った理由とは

 去年10月にフィリピンのドゥテルテ大統領が中国を訪問し、習近平国家主席らと会談、南シナ海での中国の主張を否定する仲裁裁判所の判決を事実上、棚上げした。

 ドゥテルテ大統領「中国が金をたくさん出してくれると言った」

 こうしたことなどから両国の関係が急速に改善し、中国側が海上での妨害を減らしたものとみられている。

 元々、魚がよくとれたというスカボロー礁周辺。中国が実効支配した2012年以降はフィリピンの漁民が近づくことができない状態が続いていたが、漁が再開できるようになり、市場にはスカボロー礁周辺などで捕れた魚が並んでいた。


■バナナ産業には「すばらしい機会」

 関係改善の影響は別の所にも出ている。南部ミンダナオ島のバナナ農園。ここで栽培されるバナナの多くは、中国に向けて輸出される。

 バナナ農園を経営するバンゴイさんに話を聞いた。

 バンゴイさん「スカボロー礁などの問題で政府同士がトラブルを抱えた時、中国が約6か月間(バナナの)購入を止めました」

 南シナ海問題での対立でストップしていた中国へのバナナの輸出も、ドゥテルテ大統領の就任後、問題が起きる前の水準に回復した。

 バンゴイさん「バナナ産業では、私たちにすばらしい機会がめぐってきた」


■中国は“経済成長に貢献”

 去年の中国での首脳会談では、中国がフィリピンに2兆5000億円規模の援助をすることでも合意している。それに関連して計画されているのは、町の姿を大きく変える再開発事業。ダバオの港を200ヘクタールにわたり埋め立てて、オフィス街などの入る人工島を造るという巨大な計画だ。

 人工島計画の責任者・ロメロ会長「中国は隣人というだけでなく、(フィリピンの)経済成長に貢献するという重要な役割も果たすでしょう」

 巨大な中国経済からの恩恵を期待するフィリピン。取材に応じたフィリピンのヤサイ外相は、中国一辺倒になることについては否定する一方、南シナ海での中国の主張を否定した仲裁裁判所の判決については一定の配慮を見せた。

 ヤサイ外相「我々が中国に接近しているというだけで、その他の国との関係が弱くなるということではありません。(南シナ海をめぐる問題について)他の国が関与して解決を図るものではない。フィリピンと中国だけにかかわる判決だ」

 安倍首相訪問の裏で中国の影響力が増すフィリピン。日本側も今後5年間で1兆円規模の経済支援を表明していて、フィリピンをめぐる日中の駆け引きは今後も続きそうだ。