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ワリエワ選手のドーピング疑惑 片頭痛の薬から検出?心臓血管を広げる薬物?専門家に聞いた

2022年2月10日 18:00
ワリエワ選手のドーピング疑惑 片頭痛の薬から検出?心臓血管を広げる薬物?専門家に聞いた
フィギュア団体で演技するワリエワ選手(写真:アフロ)

北京五輪フィギュアスケート団体で金メダルに輝いたロシア・オリンピック委員会のワリエワ選手(15)にドーピングの疑いが浮上。一部メディアが報じた、検査で検出されたとされるトリメタジジンとは?薬物に詳しい横浜市立大学の五十嵐准教授に聞きました。

Q報道されているトリメタジジンとは、どんな薬?

――狭心症や心筋梗塞、虚血性心疾患などの心臓病の治療に使われる薬です。古くからある薬で、日本では1968年に発売されました。

Qどんな作用が?

――番分かりやすいのは血管を広げる作用です。心臓などの血管を広げることで、心臓の負担を減らします。WADA(=世界反ドーピング機構)では、心臓が動くエネルギーを作り出す機能・代謝に影響する薬として、使用することを禁止する禁止リストに入っています。

Qスポーツで使うことは?

――2014年のポーランドの論文では、この薬の薬理学的作用を考えると、持久力を必要とするスポーツで、パフォーマンスを改善するために使われうる、と述べられています。用途は分かりませんが、2014年のソチオリンピックでも1名の陽性者が出ています。

また中国の水泳選手・孫楊選手も、同じ年に中国内の大会で陽性になっています。

Q12月の検体で陽性反応ということだとすると、考えられる服用後の影響とは?

――先ほどの論文では、服用後数日間は尿中の濃度が高いままになるため、競技中以外でも服用は注意すべきとされています。世界反ドーピング機構のルールでも、競技中だけでなく「常に服用禁止」とされています。

Qほかに考えられることは?
――禁止対象でない薬が体内で分解されて、この物質に変化する可能性があります。具体的には、ロメリジンという片頭痛の薬が体内で分解されると、一部がトリメタジジンに変化して、尿中から検出されることがあります。

世界反ドーピング機構もこの点を注意喚起していて、トリメタジジンが検出された場合はロメリジン由来のものではないかを、別途追加検査で確認することを求めています。

■IOCは…詳細は分からないまま

予定されていたフィギュアスケート団体のメダル授与式が行われていない理由についてIOCは、「法的な協議が必要になった」と説明していますが、今も詳細な内容を明らかにしていません。そして10日の会見では、疑惑について「まだ推測に過ぎない」として明言を避けています。

WADA(=世界反ドーピング機構)の規定では、16歳未満の選手などは「要保護者」とされ、一般的な開示義務は求められていません。さらに制裁についても柔軟な対応がとられるとしています。

イギリスメディアは、15歳のワリエワ選手は、この「要保護者」扱いになっているとみられるため、公式には特定されない可能性があると報じています。