“反乱”収束後初のプーチン大統領ビデオ演説も言及なし 消息不明のプリゴジン氏は“らしくない静かさ”
民間軍事会社ワグネルがロシアで反乱を起こしましたが、モスクワ直前で進軍を停止しロシア軍との衝突は回避されました。その後、ワグネルの創設者のプリコジン氏は消息がわからなくなっています。日本時間26日夜、反乱が収束して以来初めて、ロシアのプーチン大統領のビデオ演説が公開されました。こうした中、私たちは、モスクワで会社を経営している人に話を聞きました。
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日本時間26日午後7時半ごろ、反乱が収束して以来、初めてとなるロシアのプーチン大統領のビデオ演説が公開されました。
ロシア プーチン大統領
「親愛なる同志の皆さん! 国際産業『未来のエンジニア』ユースフォーラムの開催を祝福します。ロシアの産業の発展は、その専門家の質にかかっています」
産業フォーラムの開催に祝辞を述べただけで、反乱については言及しませんでした。
24日、ロシア南部の街ロストフナドヌーでは、祝砲や歓声が上がっていました。反乱を起こし占拠していた民間軍事会社ワグネルの部隊が、一斉に撤収していきました。
創設者のプリゴジン氏は、集まった人々と握手していました。「頑張って! あなたを支持しています!」「健康を願っています!」と声をかけられ、笑みも浮かべながら去りましたが、これを最後に消息不明になっています。
これまで1日に何度もあったSNSの投稿も42時間以上途絶え、AP通信は「らしくない静かさ」と指摘しています。
24日、突如、ロシアで反乱が起こり、ロシア国内では無数の銃声、爆発音が響き渡りました。プリゴジン氏率いるワグネルが反旗を翻したのです。
ワグネルはウクライナ侵攻でロシア軍に協力し、戦闘に加わっていました。
ワグネル創設者・プリゴジン氏(先月5日公開・プリゴジン氏のSNSより)
「ショイグ! ゲラシモフ! 弾薬はどこだ!?」
軍幹部を名指しして支援体制への不満などを募らせ、関係が悪化していました。
ワグネル創設者・プリゴジン氏(24日公開)
「我々が求めるのは、(ゲラシモフ)参謀総長とショイグ国防相だ。彼らがここに来ないなら、ロストフを封鎖しモスクワに向かう」
24日、ウクライナ国境からもほど近いロシア南部のロストフナドヌーを掌握。すると、約1000キロ先のプーチン大統領もいる首都モスクワに進軍すると宣言したのです。
しかし、リペツク州に入り、モスクワまで200キロの地点に迫ったところで一転、引き返すと表明しました。
ワグネル創設者・プリゴジン氏(24日公開)
「我が軍は一滴も血を流していない。車列を引き返して、反対方向にある陣地へ戻る」
イギリスメディアは、イギリス治安当局筋の情報として、モスクワへの進軍が中止される前に、ロシアの諜報員が、ワグネルの幹部に対して、幹部の家族に危害を加えると脅迫していたなどと報じています。
プリゴジン氏はかつて、レストランのオーナー時代に大統領と親交を深め、“プーチンの料理人”とも呼ばれていました。プーチン大統領は24日、「我々は裏切りに直面している」と述べ、その側近による反乱を“裏切り”と非難。撤収前は鎮圧も示唆していました。
そのプリゴジン氏の行方が、わかりません。ベラルーシに出国するとされていて、ロシアメディアは、プリゴジン氏の広報担当が「彼はみんなによろしくと言っている」と明らかにしたと伝えていますが、果たして真相はどこにあるのでしょうか。
アメリカのブリンケン国務長官はロシア国内に「深刻な亀裂が生じている」との見方を示しました。
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「news zero」は26日夜、モスクワに4年住み会社を経営している廣瀬功さんに話を聞きました。
廣瀬功さん
「車に物を積んで、念のため(モスクワ)郊外に出ておこうかなと非常に悩みました。(ワグネルが撤収して)少しは安心した」
一時、外出自粛も呼びかけられ、モスクワからの脱出も頭をよぎったという一方で、周りはどのような様子だったのでしょうか。
廣瀬功さん
「現地の人は全く普段通り過ごしていまして、ロシアの報道に関しては基本的にはあまり大きく取り上げない。現地でこういう動きがあるのを小さく扱っている感じ」
26日、モスクワ市民にも話を聞きました。
モスクワ市民
「全てが無事に終わって、内戦を避けたことがうれしい」
「私は大統領を尊敬しています。これからも変わりません」
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ロシア国内がばたつく一方、ウクライナの前線では、ウクライナ兵が激しい戦闘を展開しています。
今回の反乱でロシア軍の士気が低下するとの見方も出る中、ウクライナ側は東部などで大規模な攻勢をかけ「全てで前進している」と主張しました。
反乱を企てたプリゴジン氏らについて、ロシア政府は「罪には問わない」としていますが、ロシアメディアは「プリゴジン氏への捜査はまだ中止していない」と伝えています。
(6月26日放送『news zero』より)