韓国大統領選 カギは“若者向け政策”20代、30代の支持獲得に本腰
韓国大統領選挙まで、9日であと1か月。カギを握るのが無党派層の若者の支持です。各候補の戦略の舞台裏を単独取材しました。
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ストリート系のファッションに身を包み、ダンサーたちに挨拶するのは与党の李在明候補(57)。普段のスーツ姿とは対照的ないでたちで、ダンサーの雇用情勢について意見交換しました。
一方、学生街で、人気ドラマ「イカゲーム」をきっかけに流行ったカルメ焼きの型抜きに挑戦するのは、最大野党の尹錫悦候補(61)。
韓国大統領選挙まで1か月。2人の支持率がほぼ拮抗(きっこう)する中、特定の政党を支持しない20代、30代の若者の動向が選挙戦のカギに。両候補とも支持獲得に本腰を入れています。
今回、私たちは両陣営が進めている、若者向けの選挙戦略の舞台裏を単独取材することを許されました。
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与党の李候補の陣営で、広報戦略を担うのは、韓国の大手テレビ局に勤めていた著名プロデューサーのキム・ヨンヒ本部長です。
与党 李候補陣営 キム・ヨンヒ本部長
「日本の『日本テレビ』が取材に来たので、ちょっと雑観を撮影しますよ!」
キムさんが強調するのも、若者をターゲットにした戦略の重要性です。
キム本部長
「若者の意見を反映できる枠組みを作った方が、勝てると思います」
現役の大学生もスタッフに起用し、若者の感性を取り込もうとしています。
大学生の陣営スタッフ
「李在明候補の話し方は、とてもストレートでしょう。20代、30代が望む答えをすぐ提示してくれます」
特に力を入れているのが、ネット向けの動画です。携帯で見るように動画はタテ型です。
動画の制作スタッフ
「タテ型の映像は、私も今回初めて作っています」
李候補が公約に掲げ大きな話題になった、薄毛治療の保険適用についても──
李在明候補のYouTube
「李在明がきちんと(毛髪を)植えるために、(公約を)具体的に作りました。今後、薄毛治療の健康保険適用拡大を推進します」
「伸びろ~髪!髪!」
こうした身近な公約を、1分以内のタテ型の動画に編集し、主に若者に訴えかける戦略です。
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一方、ライバルの野党、尹錫悦候補の選挙対策事務所では、これからの戦略を若手で練る会議が行われていました。
集まったのは、約30人の若者たち。職業は農家やプロゲーマーなどさまざまです。陣営として、若者たちに「青年補佐役」という役職を与えて抜てきしました。
野党 尹候補の陣営 青年本部長
「我々に足りないのが、20代、30代を対象にした女性政策だ」
会議では若者向けの政策が次々と飛び出しました。
会議に参加 “青年補佐役”の若者
「ツイッターに女性利用者が多いので、『カードニュース』を作って積極的にまいて…」
実際にこの会議のあと、尹候補のSNSでは、政策を短い言葉のカード形式にした発信が増加しました。
他にも、若者のアイデアで実現したのが、有権者の質問にCGの尹候補が答える動画です。
尹候補のYouTubeより
「AI尹錫悦です。音楽グループ『ブラックピンク』が大好きで、特に『DDU-DU DDU-DU』が十八番です」
若いスタッフがユーモアある回答を用意し、話題になったといいます。
野党 尹候補の陣営 青年本部長
「20代、30代が選挙の主役として登場した、最初の大統領選挙ではないかと思います」
1か月後、韓国の若者たちは、どんな未来を選ぶのでしょうか。