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ロシアが柔道ルーツの格闘技「サンボ」で愛国心教育 ウクライナ侵攻と関係が…? プーチン大統領“支持母体”政党が推進

2023年11月17日 16:00
ロシアが柔道ルーツの格闘技「サンボ」で愛国心教育 ウクライナ侵攻と関係が…? プーチン大統領“支持母体”政党が推進
サンボ着姿のプーチン大統領(全ロシアサンボ連盟HPより)

柔道をルーツの1つに持つロシアの格闘技「サンボ」。そのサンボと柔道の達人ともいわれるプーチン大統領が今、サンボの普及に力を入れている。実際に推進しているのはプーチン氏の支持母体である政党「統一ロシア」だ。サンボを通じて子供たちに“愛国心”を育てるのだという。

11月16日はプーチン大統領が定めた「サンボの日」だった。ウクライナ侵攻開始から1年9か月――サンボは、ロシアをどこへ向かわせるのか?

■突然、街に現れた「学校でサンボをやろう」PR看板

NNNモスクワ支局の前に立つ広告塔に10月、「学校でサンボをやろう!」という広告が登場した。サンボは日本の柔道をルーツの1つに持つロシア独自の格闘技。それを「子供」のうちから「学校」で教え込もうというのだ。広告主はプーチン大統領の支持母体、政党「統一ロシア」と「全ロシアサンボ連盟」。なぜ今、学校でサンボなのか?

ロシア教育省は今年3月、「ロシアのすべての地域で1年生から11年生(6~17歳)までを対象としたサンボの指導方針が検討されている」と発表。表向きはロシア発祥のスポーツの普及だが、その裏には透けて見えてくるものもある。

■大統領令で決定「11月16日は『サンボの日』」

11月16日は「サンボの日」。プーチン大統領が去年12月、大統領令で突然、決めた。ウクライナ侵攻が長期化する中、「部分的動員」発表があった2か月後のことだった。

最初の記念日となった16日、プーチン大統領は「『サンボの日』のイベントを通して、若い世代の調和のとれた育成に貢献できる」と祝辞を述べた。KGB出身のプーチン大統領が“柔道やサンボの達人”であることは知られているが、第二次世界大戦以前から存在する「サンボの誕生日」を、今になって制定したのは、なぜなのか。

改めて「サンボ」について紹介したい。サンボは1920年代、旧ソ連軍や警察官の自己防衛術として誕生したロシア(旧ソ連)の格闘技だ。フランスや旧ソ連の民族格闘技のほかに、明治時代に日本で柔道を身に付けたスパイ、オシェプコフ氏の「柔道」をルーツに持っている。1938年の「11月16日」に旧ソ連体育・スポーツ委員会の命令で、当初は「フリースタイルレスリング」として誕生した。

実際には、柔道着のような道着と帯をつけ、レスリングシューズのような靴とショートパンツで、円形マット上で競いあう。相手を投げるなどして優勢ポイントを稼ぐか、肘、膝、足首の逆関節を取って、相手が降参すれば勝ちとなる。

将来のオリンピック競技を目指していたサンボの競技団体「国際サンボ連盟」は2021年、IOC(国際オリンピック委員会)から正式に承認された。しかし翌22年、ロシアはウクライナへの軍事侵攻によって、オリンピックへの参加自体が難しくなった。

こうした中で、サンボを“愛国心”教育のために…とする考え方が台頭してきているのだ。

■プーチン大統領の支持政党に「サンボプロジェクト」

実は、プーチン大統領の支持母体である政党「統一ロシア」は去年7月、「サンボプロジェクト」を発足させた。ロシア教育省によると、「統一ロシア」総評議会のトルチャク書記は「毎年500の新しいサンボ道場を開設する」のだという。その目的については、こう語っている、「サンボが教えるのは“勝利の科学”だ。多くの人がこのサンボに親しめば、ロシアはより強く、安定したものになる」。

また、党のメンバーで全ロシアサンボ連盟のエリセーエフ会長も「教員養成課程にサンボの単位を含めるべきだ。若い世代に愛国心と精神、道徳の発達を促すことが重要だ」強調した。

愛国心――これはプーチン大統領が演説でよく使う“決めセリフ”だ。果たして、スポーツと政治を一体化させようという意図なのか。

今年5月9日の「戦勝記念日」で、プーチン大統領の演説はこう締めくくられた。「祖国への愛ほど強いものは、この世に存在しない。ロシアへ、勇敢なる我が軍に、そして勝利に万歳!」

去年2月24日に始めたウクライナ侵攻は、すでに1年9か月に及ぶ。1年前に発表した「部分的動員」は、国民の間に思いもよらぬハレーションを引き起こした。多くのロシア人が“まさか自分が戦場に送られるとは思っていなかった”からだ。ロシアから国外に脱出する国民が続出し、議会では「愛国心が足りない」とする議論も沸き起こった。

こうした状況を受けてか、ロシア政府は今年9月の新学期から、ウクライナ侵攻を正当化する新しい歴史教科書を採用して、愛国教育の強化を始めた。プーチン大統領は、軍事侵攻は「ロシアを守るための戦い」だと主張し、「愛国心」という言葉を良く使うようになっている。

15日と16日の2日間、モスクワでは去年、完成したサンボの宮殿で「全ロシアサンボの日」大会が開かれた。11歳から17歳の子供たち400人が全国から集まり、勝敗を競った。見たところ、日本でも普通に行われるスポーツ大会のようだが、主催者は政党「統一ロシア」。会場で保護者らに、サンボと愛国心について尋ねてみた。

めいが大会に出場しているというクリミアの女性は「クリミア半島で何があったか知っているでしょう。サンボは愛国心。私たち家族には愛国心があります」と胸を張った。

イルクーツクの女性コーチは「『サンボが愛国心を育てる』という考えに同意します。プーチン大統領もサンボは優先事項だと話していますし」と答えた。

サンボ普及の目的が愛国心の育成で、それがウクライナへの特別軍事作戦へのアレルギーを消し去るためだとしたら…。オリンピック競技を目指していたサンボは今、戦時下の国策に組み入れられようとしている。

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