羅氏「香港の戦いは民主主義全体の戦い」
香港での「国家安全維持法(国安法)」施行後に身の危険を感じたとして香港を離れ、今はロンドンに滞在している民主派リーダーの1人、羅冠聡氏。中国国営放送は羅氏が香港政府から指名手配を受けたと報じています。こうした動きを受けNNNは羅氏に2度目の単独インタビューを行いました。
羅氏は指名手配を受けた事について「政府が標的にする人物を不当な方法で罰しようとしている。人々に恐怖感を与え自己検閲させることが目的なのだ」と強調、また香港での戦いは民主主義全体の戦いなのだとして国際社会に改めて支援を呼びかけました。香港で何が起きているのか、キーマンが語った事とは?(前編から続く)
■世界と香港の状況に変化をもたらすことを願っている
Q:あなたは今恐怖を感じていますか?
そうですね、私は今まで怖くない、恐れてないと言ったことはありませんが、それよりも大事なのは怖いと思ってもどう対応するか?ということです。運動から撤退した人や私よりも先にどこかに隠れた人もいます。私は自分自身以上に大切なことであると思っているため、任務を続行していきます。それは活動に貢献するものであり、私が受け継いでいる行動が、世界と香港の状況に変化をもたらすことを願っているからです。もし目前で強い脅迫にさらされたとしても、立ち去るのではなく、それに立ち合い実際に直面することが私の対応の仕方なのです。
Q:これからも民主化の活動を続けるのですね?
はい。もちろんです。香港の自治と民主主義は、北京から約束されたものです。私達は正当な主張を求めているだけです。自分達が約束しなかったことや、何もないところから持ち出したことに関して求めているのではありません。実際に香港に居なくても、今後もそうしていき、続行していくでしょう。
Q:家族や友人のことが心配なのでは?
はい。中国本土による国安法の施行を参考にすればそうです。人権派弁護士が刑務所に送られたり、釈放されたりするケースはたくさん存在します。子供達は学校に通うことや国を離れることすらできません。家族全員が苦しむのです。香港はおそらくその道をたどり、指名手配された方々や起訴された方の家族や友人は苦しむことになるでしょう。もちろん私は彼らのことをとても心配していますよ。
Q:中国と関係の深い国を訪れた場合、逮捕される可能性もありますね。
ええ、もちろん。例えばコーズウェイ・ベイ書店(銅鑼湾書店)の事件のように。タイや香港で養子になった人達のようにね。中国と密接な関係にある国や権威主義的な国であれば、中国の手が非常に広範囲にわたり届くのが分かることでしょう。
Q:長期間香港に帰れないことについてどのように思いますか?
遠い将来まで家を離れなければいけないのであれば、間違いなく厳しい選択になると思っています。
特に香港には多くの人脈があり、家族がいて馴染みのある文化があり自分の家と呼べる場所があるのですからね。そういう場所を去るのは非常に難しいのですが、自分が歩んでいる道と行動は確かに自分自身の事より大事なことだと思っています。それは個人的な選択ではなく活動に役立つためです。香港内では国安法で皆が脅威にさらされている為、私が香港の人々の代表者として発言し、彼らの要求や意見を大声で表現できるよう、また香港外でこういった声が伝わる事を望んでいるのです。
■香港だけの戦いではない
Q:今後のスケジュールは?
私は学者やシンクタンク、政治家と多くの会合を開いてきました。香港の問題は簡単な話ではないため、彼らへメッセージを伝える為に、政治の現場にいる関係者・ステークホルダ―に対し香港の問題と理解を呼びかけています。これは、私の義務でもあり、責任でもあり、これからも続けていきたいと思っています。
私の今後の予定については、講演のお誘いもありますし、出席する会議もたくさん予定されています。
Q:香港の友人や同僚からのメッセージはありましたか?
直接の連絡はないですが、ソーシャルメディアで繋がっているので、彼らからのメッセージを読むことはできます。
Q:どんなメッセージか教えてもらう事はできますか?
そうですね、アグネス(アグネス・チョウ=周庭)やジョシュア(ジョシュア・ウォン=黄之鋒)のような活動家は、危険な状況にさらされています。今日裁判所に出廷していたと思います。数か月後に裁判と判決を受けます。彼らは非常に危険な状況にさらされているので、間違いなく政府の標的なわけですからとても心配です。
(※:本インタビュー(8月5日)後の10日、周庭氏は国安法に違反した容疑で逮捕され、翌日保釈されました。羅氏は10日、「中国政府が香港の若者を黙らせ、事態を緊迫させる恐ろしい行動をとっている」と述べ、逮捕を批判しました。)
Q:香港の問題を巡り国際社会に対して何かメッセージがあれば教えてください。
そうですね。私は香港のための戦いは香港だけではなく、民主主義と民主主義的価値観全体のため戦いだと考えています。民主主義の崩壊の話は長くなりますが、大きな理由の一つは、(国際社会は)過去数十年間、中国への宥和戦略を採用し、経済成長が一定のレベルに達したときに中国が開放し、民主化し、自由化してくれることを期待してきました。実際には権威主義を貫いてきたことですが、それは全て間違った判断であったことに気付いたのです。
それは国際社会でやりたい放題を許すことで権威主義を強化するようなものです。重要なのは警告のシグナルを送ることです。好き勝手な行動を無くし、香港での人権侵害の責任を負わせ鎮圧させることです。中国の拡大主義的な性質と本当に戦うためには、国際社会が手を取り合い、民主主義的な価値観を全体として守る必要があります。香港はリベラルな価値観と権威主義の戦場でもあり、象徴的な場所なのです。
民主主義の生死がかかっている注目するべき所なのです。日本や韓国のような民主主義国も含めて手を取り合い、我々が大切にしているリベラルな価値観を明確にしていくことが大切だと思います。