プーチン大統領の2021年 次の一手は?
■プーチン大統領がパーキンソン病で2021年初めに引退?
2020年11月、イギリスメディアなどがプーチン大統領について驚くべき記事を出した。大統領府の内情に詳しい政治評論家が大統領の映像を分析したところ、脚が絶えまなく動き、ペンを持つ手が痙攣しているように見えるなどパーキンソン病の兆候があり、21年初めにも引退する可能性があるというのだ。
御年68歳のプーチン大統領にとって、健康不安説や去就の問題は、度々取り上げられ、年中行事のようなものだ。20年の暮れに行われた年末恒例の会見ではプーチン大統領には、そのような兆候は全く見られず、記事の真偽は定かではない。
■憲法改正で最長2036年まで大統領の座に
プーチン大統領は、24年の次期大統領選で任期満了とみられていた。しかし20年7月、新型ウイルス感染拡大の最中にもかかわらず、憲法改正の是非を問う国民投票を強行し、自身の任期を最大2036年まで延長させた。実質、終身大統領となる可能性を残した形だ。
さらに、大統領経験者に対して刑事免責や終身議員の地位を付与することも明記した関連法も成立させた。将来の退任後に備えた身分保障を整えていることからも、大統領が24年に退任するか否かはさらに不透明になっていて21年は、退任か続投かどちらに舵を切るのかその方向性を見極める年となりそうだ。
■日露平和条約交渉はさらに困難に…
2018年11月、当時の安倍晋三総理大臣はシンガポールでプーチン大統領と会談。日ソ共同宣言に基づく平和条約交渉の加速で一致した。北方領土問題で大統領の歩み寄りを促すためにそれまでの「四島返還」から「二島返還を先行させる」へ舵を切ったが、その後、安倍総理は展望が描けぬまま退陣。
後継の菅義偉総理は20年10月の所信表明演説で「北方領土問題を次の世代に先送りせず、終止符を打たねばならない」と解決への意欲を述べた。しかし、新型ウイルス感染拡大もありプーチン大統領との会談は就任直後の電話による1度だけにとどまっていて、日本側に有効な次の手は見えていない。
一方のロシア側。20年7月の憲法改正で領土の割譲禁止を明記し、12月には自国の領土の割譲につながる行為を行った者に対して、懲役刑などを科すことができる法律の改正案を成立させた。さらには、北方領土に高性能な地対空ミサイルを実戦配備するなど軍事化をすすめている。
今後、プーチン大統領が北方領土問題を含む日露平和条約交渉で態度を軟化させる材料も見当たらず、交渉の行く末は厳しいままだろう。
■ナワリヌイ氏の毒殺未遂事件はプーチン政権の仕業か?
2020年8月、ロシアの野党指導者で反プーチン派の中心人物であるナワリヌイ氏が、神経剤「ノビチョク」とみられる物質を盛られた毒殺未遂事件。
過去にはイギリスで同じ神経剤「ノビチョク」を使ってロシアの反体制派の人物が攻撃される事件が起きたこともあり、政権側は関与を疑われていたが否定し続けている。
ナワリヌイ氏は退院後に「プーチン大統領の命令で治安当局がテロ行為を組織した」と主張。さらに、12月には、イギリスの調査報道機関などが飛行記録や携帯電話の位置情報などから、数年にわたってナワリヌイ氏を監視してきたロシア治安当局のメンバーが特定されたと発表した。
これに対し、大統領はロシアの治安当局が関与したという説はアメリカによる陰謀で、ナワリヌイ氏は標的になるほどの重要人物ではないと改めて関与を否定。さらには、「毒を盛るなら、殺害していただろう」とも語った。
ナワリヌイ氏はロシアへの帰国を希望しているが、21年、同氏の帰国が実現するのか。実現したらどう行動するのか。その動向が注目される。
■ロシアの新型ウイルスワクチン「スプートニクV」で国内経済の立て直しと国威発揚?
2020年8月に、世界に先がけて自国産の新型ウイルスワクチン「スプートニクV」の承認を発表したプーチン大統領。12月、イギリスで製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンの接種が始まるのを前に駆け込むように、首都モスクワで一般国民へのスプートニクVの大規模接種をスタートさせた。
臨床試験の最終段階が完了しておらず、安全性に懸念もある中でロシアはスプートニクVが有効性が高く(91.4%)、低価格だとアピールし欧米産ワクチンへの対抗心をむき出しにしている。
なぜそこまでして欧米に対抗するのか。そこには、ロシア産ワクチンの国際的な存在感を高め世界へ売りこむことで、原油価格下落や新型ウイルスの影響などで低迷する国内経済の立て直しの足がかりにする狙いがある。また、プーチン政権の維持にとって必要不可欠な国威発揚に最大限活用したい思惑が見える。
2021年、世界がコロナ禍からの脱却を目指す中、プーチン大統領は大国ロシアの舵取りにどう手腕を振るうのだろうか。