米外交トップ“北へ拉致問題の提起”明言
アメリカ・バイデン政権発足後、初の外遊で日本を訪れたブリンケン国務長官がNNNの単独インタビューに応じました。北朝鮮と交渉の機会があれば「必ず拉致問題を提起する」と明言したほか、日本に対し、対中国を念頭に、日米防衛協力について「人的資源も含めた投資が必要だ」と強調しました。
17日午前11時過ぎ。NNNの単独インタビューに応じたアメリカのブリンケン国務長官。日本では外務大臣にあたるブリンケン氏。バイデン大統領を20年近くにわたり支えてきた“側近中の側近”で、オバマ政権の国務副長官として、たびたび来日した外交のエキスパートです。その一方で、ブルースを演奏する「バンドマン」の一面も。
日本テレビの小栗泉解説委員が聞きました。
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――ギターを演奏されているビデオを拝見しました。
ブリンケン国務長官「ええ」
――今も演奏されるお時間はありますか?
「いいえ、十分にはありません。ギターに見つめられて罪悪感があります」
中国を名指しで批判する共同声明で歩調を合わせた日米ですが、日本が経済的な関係の深い中国にどこまで強気に出られるのか懸念する声もあります。
――日本がアメリカと一緒に中国に対応できなくなる可能性がありますが、アメリカは日本が違うアプローチをとることを、どこまで許容できるでしょうか?
「敵対する側面もあれば競争する側面もあり、協力する側面もあります。強い立場から中国にアプローチするということで、その力は我々の同盟関係、そして団結から始まります」
「国民や価値観や利益を守るには、負担が伴うことは両国が承知していることです。人的資源を含め、資源への投資が必要です。日米両国はその投資を行う決意をしたと思います」
人的資源も含めた投資も必要だと述べたブリンケン氏。対中国を念頭に、自衛隊の南西方面への態勢拡充などを求めた形です。
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一方、中国の人権侵害を問題視するアメリカでは、「来年冬の北京オリンピックをボイコットすべき」との声もあがっています。
――アメリカが北京冬季五輪をボイコットする可能性はありますか?
「北京五輪の見通しについては、新疆ウイグル族などのマイノリティーに対する人権侵害や香港で起きていること、台湾での緊張の高まりなどがあり、世界中でそのような懸念の声が出ているのを聞いています」
ブリンケン長官はこのように述べ、ウイグルなどの人権問題の改善状況を見極めて判断する考えを示しました。
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一方、トランプ前大統領による首脳会談以降も核開発を続ける姿勢を示している北朝鮮については――。
「朝鮮半島の非核化の重要性については、日米は完全に一致しています。北朝鮮のミサイル開発は日米双方にとってますますの脅威となっています」
朝鮮半島の非核化に向けて、日本とより緊密に連携すると強調。さらに、日本が最も重視している北朝鮮による拉致問題。トランプ前大統領は拉致被害者家族とも面会し、北朝鮮に直接、拉致問題を提起しましたが、バイデン政権はどう対応するのでしょうか。
――北朝鮮側と交渉する機会があれば、主要議題の一つに拉致問題を提起しますか?
「はい。私たちは拉致被害者家族と日本国民と完全に連帯している。今後、北朝鮮との間で何が起きようとも、私たちは拉致問題を心に留めておきます」
長官は、北朝鮮側との交渉の機会があれば「必ず拉致問題を提起する」と明言しました。日本滞在中、拉致被害者救出の願いを込めたブルーリボンのバッジをつけるブリンケン氏。日本政府関係者も「こまやかだ」と驚く配慮を見せました。
拉致被害者家族から手紙を受け取ったことも明らかに。手紙の中で家族らは、日本政府と連携し全ての拉致被害者の速やかな帰国の実現に力を尽くすよう、バイデン政権に強く訴えました。
「非常に力強く、心動かされる手紙でした」と話すブリンケン氏。
拉致被害者・横田めぐみさんの母・早紀江さん(85)は、「これ(拉致問題)は本当に大切なことだって言ってくださっていることは、本当に驚くほど感動しましたよね。ありがたいなと思いましたね。ぜひこの、今のこの時期になんらかのいい動きがあることを願っております」と話しました。
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一方、史上最悪とされる日韓関係については「今後も多くの問題が起きると思いますが、最終的には共に緊密に問題解決に取り組むことが日韓両国の利益になると思います。それは歴史問題についても同じです」と述べ、アメリカとして「同盟国同士の関係活性化にも深く関与していく」と述べたうえで、日韓関係の改善を促しました。
17日午後、次の訪問地・韓国に到着したブリンケン氏。最大の懸念である対中国外交をめぐり、同盟関係の強化をアピールするとみられます。