タリバン実権握り 女性権利“抑圧”の懸念
中東のアフガニスタンでは、イスラム主義勢力タリバンが実権を握ってから、女性の権利の抑圧への懸念が高まっています。かつて女性の地位向上のために設置された「女性問題省」は、現在閉鎖に追い込まれています。NNNはその内部の映像を入手しました。
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銃を持って壁際に並ぶタリバンの男たち。
タリバンの警備責任者「およそ50人の警備員がいます」
ここは、女性の地位向上を目指して民主政権下で設置された「女性問題省」です。現在は閉鎖され、看板は旧タリバン政権で女性抑圧の象徴とされた勧善懲悪省の看板に差し替えられています。
先月、アフガンの文化などを伝えるネットメディアが、その内部を取材しました。
女性問題省では、職員の半数以上を女性が占めていました。そのため、小さな子どもを預けることができる保育所があり、女性が働きやすい環境が整っていました。しかし、タリバンの警備責任者は、こうした環境に異論を唱えます。
タリバンの警備責任者「毎週水曜日に子どもたちが、音楽を聴く時間があります。これはイスラム法から逸脱していて、これは洗脳です」
旧タリバン政権では、音楽は禁止。そのため、イスラムの教えに反しているというのです。
かつてこの場所で働いていたものの、出勤が許されず、自宅に閉じこもったままだという女性問題省の女性職員は、NNNの取材に苦しい心境を明かしました。
女性問題省の女性職員「アフガンの人口の半数以上は女性で、家にいて女性を過小評価するようではアフガンの発展はありません」
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また、女性の声を伝えてきたメディアも、今は、声をあげられずにいます。
アフガンから、カナダに退避した女性ジャーナリスト、ハリーダ・ラシードさん(24)に話を聞きました。
ジャーナリスト ハリーダ・ラシードさん「タリバン政権では、国の発展も自由もなくなり、生きていけないと思い国を出ました」
ラシードさんが勤めていたのは、2017年に設立された“女性による女性のためのテレビ局”「ZanTV」。
“Zan”とは、現地語で“女性”を意味していて、撮影・編集・出演、いずれも女性たちが担い、女性差別の問題などを伝え続けてきました。
カナダに退避したジャーナリスト ハリーダ・ラシードさん「テロ現場での取材中に、タリバンがすぐ近くで発砲したこともありました。これから残虐で暴力的な本当の顔を見せると思います」
ZanTVは、タリバンのカブール制圧後に放送を休止。タリバンによって機材は持ち去られ、スタジオはもぬけの殻になっていました。
さらに、今もアフガンに残る別の女性ジャーナリストは、恐怖と戦っています。
アフガンに残るジャーナリスト「女性がメディアの仕事をすることはとても危険です。ジャーナリストとして再び働き始めたら殺されるのではないかとおびえています」
タリバンの支配下で、女性の権利はどこまで守られるのか。抑圧への不安は拭いきれていません。